福井県の恐竜発掘のあらまし

恐竜化石発掘現場全景
恐竜化石発掘現場全景

発掘調査レポートをお届けするにあたり、まず福井県での恐竜化石発掘調査の歴史と成果についてご紹介しておきたいと思います。これまでにもいろいろな形で紹介してきました(「手取層群の恐竜:福井県立博物館発行(現在は恐竜博物館で販売)」、「福井県の恐竜発掘:福井県立恐竜博物館ホームページ」など)ので、細かくはそちらを参照していただければと思いますが、ここでは、発掘のあらましをお伝えしたいと思います。

今、発掘を進めている場所は福井県勝山市北谷町杉山で、そこは杉山川とよばれる小さな川が両側の山を削ってできた谷あいです。1982年、ここで中生代のワニ化石のほぼ一体分の骨が掘り出されました。このことが後々この地で発掘するきっかけとなったようです。1986年、勝山市と接している石川県白山市白峰の通称「化石壁」で見つかった肉食恐竜(獣脚類)の歯が世の中に公表されました。これが北陸地方に分布している恐竜時代の地層「手取層群(てとりそうぐん)」から発見された恐竜化石の第1号です。

手取層群産の恐竜化石第1号
手取層群産の恐竜化石第1号
第一次発掘調査の様子(1989年)
第一次発掘調査の様子(1989年)

そのような中、福井県勝山市のワニ化石産出地では、1988年に福井県立博物館(当時)によって恐竜化石発見のための予備調査が実施されました。その結果、小型肉食恐竜の歯の化石などが発見され、本格的発掘調査へとつながっていったのです。恐竜化石発掘調査は、翌1989年から1993年までの第一次調査、1995年から1999年までの第二次調査、2007年から2011年までの第三次調査として大規模に推し進められてきました。

当館の北谷での発掘について特筆することの一つは、化石を含む硬い地層の中から大規模に恐竜化石を取り出す方法(層面法)の確立です。調査対象の地層を広く露出させるため、上に乗っている地層を除去した後、重機を使って地層を一枚一枚はがすように取り外し、その岩石を大割りし、中から骨や歯、足跡の化石などが見つかれば、しっかりと保護して採取します。また、残りの岩石はハンマーを使って人力で小割りし、同じように化石を見つけて採取します。この作業をスムーズに進めて発掘を効率良く進めていきます。この方法は、恐竜博物館と共同で研究を進めているタイや中国などの海外の発掘調査にも応用して使われています。

発掘は夏の期間続けられます。恐竜博物館のスタッフはもちろんですが、全国の地質学、古生物学を学んでいる大学生たちや、発掘作業に長年携わってきた重機のオペレータの方々、その他にも多くの方々の共同作業の結果が、発掘の成果として現れてきます。

杉山川が流れる谷間は、真夏の炎天下であっても時々さわやかな風が吹いてきます。夕方ともなれば、夕立が涼しさを運んでくれます。今年から発掘現場には、再びあの熱い鎚音が響き渡ることでしょう。

第一次発掘調査の様子(1990年)
第一次発掘調査の様子(1990年)
多くの大学生に支えられる発掘
多くの大学生に支えられる発掘

(後藤道治)

© 2013 Fukui Prefectural Dinosaur Museum.
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