タイ恐竜発掘調査レポート2013
恐竜博物館は昨年度に引き続き、タイでの第2次恐竜化石共同発掘調査を開始しました。タイ王国珪化木鉱物資源東北調査研究所(タイ王立ナコーン・ラチャシーマ・ラジャバット大学付属)との共同発掘調査で、2011年度からの4ヶ年の計画です。
「年明け早々の発掘調査開始」
今年度の調査では、先発隊3名が1月11日にナコーン・ラチャシーマ(コラート)に入りし、現地スタッフと共同で発掘の準備を行いました。今年度の発掘地は、ナコーン・ラチャシーマ県ムアン・ナコーン・ラチャシーマ郡スラナリ町のこれまでの発掘地に連続するエリアです。昨年と同じく「暑い」1~2月の発掘ですが、たくさんの化石が出ることを期待して発掘を開始しました。
1月17日には東特別館長も合流、恐竜の骨化石発見に期待も高まります。
「ラオスからも参加」
タイで恐竜化石を産出する地層はタイだけでなく、東隣のラオスにまで分布しており、そこでも恐竜化石が発見されています。恐竜博物館ではラオスの恐竜、タンバヨサウルス(複製)を2010年の特別展で展示しましたが、その実物化石を保管しているラオス・サワナケットの恐竜博物館から、副館長さんらが発掘の様子の視察に来られました。タイのコラート・フォッシル・ミュージアムとラオスの博物館とはいい関係にあります。副館長さんと研究員さんはハンマー隊に参加、2名の女性職員は標本整理に参加しました。
「貝の化石も出たよ」
発掘しているコク・クルアト層からは、恐竜などの脊椎動物化石以外にも化石が出ます。貝化石や植物化石ですが、植物化石はほとんど炭質物状態なので「植物」としかわからないものが多いのですが、貝化石は一応形があるので何とかわかります。貝化石の層は恐竜化石の入っている層より下の方、深いところにあるのですが、たまに恐竜化石の入っている礫岩層からも見つかります。写真は、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、淡水生二枚貝のプリカトウニオです。
「お昼休み」
発掘のお昼休みは12時から1時間です。日差しが強いので昼休みはテントの下で過ごします。まずは買ってきたお弁当を食べて、その後はおもいおもいに過ごします。タイの隊員たちは、毎日のようにお菓子やフルーツを持ってくるので、私たちも食べさせてもらいます。フルーツは熟したものはそのまま食べますが、青いパパイヤやマンゴーなどの熟していないものはソースにつけて食べることがおおいようです。肉体労働なので、疲れて食後は昼寝をする人がたくさんいます。そのままシートの上で寝る人、標本箱の上で寝る人、ハンモックで寝る人と、昼寝スタイルもさまざまです。
「発掘現場での測量」
タイの発掘現場では、恐竜の出る地層が妙な形で出てきます。削ったり割ったりしたのではなく、地面を掘るとこのような形(※写真参照)で出てくるのです。何故この形になるのかはまだわかっていませんが、私たちは一つ一つの塊を「島」と呼んでいます。いったいどの島から化石が出たのか?どんな所に化石が集中しているのか?それらの情報は研究のための重要なデータとなります。そのために島の大きさや方角などを測り、図を描いて、どの辺りから化石が出たのかを記録しています。
距離と方角を測定する作業はそこまで難しくはありませんが、長い距離は一人で測る事が出来ません。協力してくれる方が必要です。そのため、タイの調査員に協力してもらい一緒に測量を開始しました。私は恥ずかしながら英語もうまく話せず、タイ語もできませんでした。その作業を手伝ってくれた方は、英語で測った距離を教えてくれるのですが、聞き間違えたり、センチメートルではなくインチで測ってしまったり、始めのうちは全然うまくいきませんでした。
そんな状態を見かねた協力者の彼女が、「明日、日本語の数字を覚えてくる」と言いました。翌日、彼女はまだたどたどしいものの確かに日本語で数値を読み上げてくれました。その時、とても嬉しく感じたのを覚えています。逆に私はダメだとも感じました。次は「明日は私がタイ語の数字を覚える」と宣言して、お互いの国の数字を覚えました。彼女は日本語で、私はタイ語で確認、という一見すると非効率な作業でしたが、そうやって確認することで間違いもなくなり、現場での測量作業は円滑になりました。一方、そのデータを元にした作図はズレが出たり、うまく形が描けなかったり、こちらも慣れるまでは大変でした。