タイ恐竜発掘調査レポート2012
タイ王国珪化木鉱物資源東北研究所(タイ王国ナコーン・ラチャシーマ県)との共同発掘調査、後半のようすをご覧ください。(調査レポート前半はこちらからご覧ください。)
進む発掘作業
2月は暑い…。
今までタイでの発掘作業は11~12月にかけて行っていました。ちょうど乾季で冬にあたるからです。といっても、我々にとっては夏。「いつ発掘しても一緒」だと思っていました。しかし、それが間違いだと気づかされました。
タイで夏に向かって暑くなり出すのがちょうど2月。初旬は過ごしやすかったものの、中旬以降、次第に作業中の暑さが激しさを増してきました。ハンマー隊で手伝ってくれている地元の人たちからも「ローン・マク・マーク(暑すぎる)」と不満が続出。でも仕事の手を休めないのがタイの人々の素晴らしいところです。そして、暑いときには辛いもの!重機のオペレーターが昼休み、東北地方の名物「ソムタム(パパイヤサラダ)」を作ってくれました。
おかげで暑さにも関わらず、作業は順調。大小様々な化石が発見されています。
コラートでの発掘終了
約1ヶ月近く続いた、コラートでの発掘調査もいよいよ終わりです。あらゆる発掘現場で頻繁に起こる不可解な現象があります。今回も起きました。それは…「終わりになると良いものが見つかり始める…」です。
今回のタイのような発掘現場では終わりはありません。恐竜化石を含む岩石は辺り一帯の土壌の下に埋まっているのです。発掘期間も終わりに近づき、そろそろ現場を片付けようかと考え出したそのとき、暑さもどこかへ消えてしまうような化石が発見されます。今年はイグアノドン類の下あごの骨と、大きな骨化石が出てきました。
この産地はまだまだ可能性があります。今後も継続的に調査し、新しい恐竜がでることは間違いないでしょう。
来週からはチャイヤプームという、車でコラートから北西へ3時間ほど行ったところにあり、後期三畳紀の地層が分布していると考えられている場所へ移動です。
チャイヤプーム ~三畳紀の地層を求めて~
チャイヤプームは後期三畳紀の地層が分布し、イサノサウルスなど恐竜化石が発見されている場所として知られています。今回の発掘調査では、チャイヤプームの街中から北北西に車で約40分のところにある、ノン・ブァ・デンという町へやってきました。ここでは、以前から畑を耕している時に恐竜と思われる化石が発見されており、有望な産地だと期待されています。
その中で今回発掘を行ったのは、ノン・ブァ・デンの中心部から車で15分離れたところにある村。以前、珪化木鉱物資源東北研究所に恐竜化石の発見の報告をした地元農民の協力のもと、発掘調査が開始されました。
畑の中にあるため池(現在は干上がっています)周辺からたくさん骨化石が見つかっているようでしたので、その周辺から地道に岩石を調査していくことになりました。
しかし、その前に!まずはお祈りです。地元農婦によると、少し前にこの畑を走っている子どもの幽霊を見たとか…。きっと良い化石が見つかるはずです。
続々と骨化石を発見!
本格的に作業開始。重機のオペレーターは、コラートでも手伝ってくれていた人を連れてきました。人懐っこく、ユーモアがあるだけでなく、何より、化石に対する嗅覚が凄い!重機を操縦しながら、いち早く骨化石を見つけます。ここ、チャイヤプームでも彼の力が多いに助けになりました。
ため池周辺の岩石調査が一段落した後、ため池西側の骨化石が含まれている地層を掘削することにしました。しかし、岩石が固いうえに、化石がほとんど出ません。「マイ・ミー・アライ(何も無い)」。すぐに場所を移動。北側へ掘削場所を変更しました。
すると、この場所からは次々に骨化石が発見されました。大きな岩石にたくさん骨化石が含まれた状態の標本は、そのまま研究所へ持ち帰ることにしました。その後、掘削現場でも骨化石が見つかり、アイスピックなど先の尖ったものや刷毛を用いて慎重に作業を進めていきます。ある程度露出させ、最終的には化石がバラバラになってしまわないように石膏で覆い、取り出しました。
今回の調査は比較的短いながらも、予想以上の骨化石が発見されました(量、質とも)。発見された骨化石の多くは非常に薄く、形が複雑です。今後クリーニング作業を進め、その正体を明らかにしていきます。