骨化石の全体の形を想像するとワクワクします

8月25日の発掘前線作業のようす
8月25日の発掘前線作業のようす

こんにちは。千秋です。

本日も発掘現場に行くことができましたので、レポートをします。危うくまた一週間たってしまうところでした。

二十四節気でいう処暑がすぎると暑さが収まってくる、というのは単に暦の上での話でしょうか。まだまだ暑さが続きそうな恐竜発掘現場です。9月が目前となり調査終了が視野に入ってきましたが、隊員たちはがんばっているでしょうか。

2つの丸みを持った太い骨化石
2つの丸みを持った太い骨化石
ワニの歯にも見える円錐形の骨化石
ワニの歯にも見える円錐形の骨化石

さて前線では、またちょうど面白い骨化石が発見されていました。2つの丸みがある骨化石です。ほぼ完全な骨端部と思われ、そうだとすると関節部であるということです。大きさもそこそこあります。フクイラプトルのものが思い出されますが、一部分だけでの判断は危険ですね。またひとつ、今年の調査報告が気になる資料が出てきました。

また、他の割れ面には円錐状の骨化石が見えています。惜しむらくは先端が欠けていることですが、反対側の石に付着しているとのことで、標本としては大丈夫でしょう。円錐形といえば単純にはワニの歯が思い浮かびますが、表面にはそれらしいピカピカのエナメルや、魚食を示すしわの類が確認できません。先端や岩に埋まっている奥がどうなっているのか、こちらも楽しみな化石ですね。

前線部隊での梱包・記録の様子
前線部隊での梱包・記録の様子

前線の脇では、標本の整理を行っています。発見した標本をリストに記録し、化石の部分に保護剤を塗って綿をあてて梱包、また可能であれば岩を手頃なサイズにまで割り、持ち帰り用のテンバコに収めます。先日と同様、骨化石発見が続いているので、手を止めるヒマがありません。面白い化石が続出しているのでやり甲斐はあるでしょうが、現場の「戦利品」が一手にかかっているので緊張を持続しないといけません。大変です。

ハンマー隊での梱包・記録の様子
ハンマー隊での梱包・記録の様子

さてハンマー隊のようすです。こちらでもぼちぼちと骨化石が発見されています。ハンマー隊の学生さんたちもお盆のころと比べるとちょっと少なくなってきました。なじみの学生さんもいれば、新人さんもいます。学生さんの間での経験継承もうまく機能しているようで、長年続けている甲斐がありますね。

獣脚類の歯
獣脚類の歯

ハンマー隊では獣脚類の歯をちょうど発見したところで、梱包の直前に見せてもらいました。大きさはさほどではありませんが、表面がつやつやしていて、やはり歯はキレイです。見えている箇所の端には、ギザギザのセレーションが少し確認できます。クリーニングをすればさらに隠れたセレーションが見えてくることでしょう。この大きさということは、フクイラプトルのものと思って良いのでしょうか。

割れ面に見られる植物化石
割れ面に見られる植物化石
シダ植物とそれを踏む足跡
シダ植物とそれを踏む足跡

岩の割れ面には色々な化石が出てきます。ハンマー隊脇に置かれた岩には、植物の化石が見られました。恐竜時代の発掘現場は川の流れの氾濫原らしく、植物は流れで細切れになって地層の中に入ってきます。ですので葉っぱや枝など、どの部位に相当するのかの証拠がほとんど欠けてしまっていません。これは三つ叉になっている葉っぱが残されています。こうした部分部分の小さな証拠を寄せ集めて、全体を復元していくのです。

またこちらでは、シダ植物が地層面についていますが、よく見ると三つ叉のくぼみが重なっています。くぼみは足跡化石で、この形は鳥脚類のものでしょう。「かかと」でシダ植物を踏んでいます。地層面は泥岩で、当時は穏やかな流れの川岸だったのでしょう。一枝のシダ植物が流れ着いて水が引いた後、とある小型鳥脚類がそれを踏んでゆっくりと歩き去った。そんな情景が思い浮かびます。

貝化石が入ったテンバコ
貝化石が入ったテンバコ

他方では、貝化石が群生する沼のような時代もあったのでしょう。現場では大小さまざまな貝化石が大量に発見されています。これらの貝が単に流れ着いたのではないというのは、きちんと両面が揃った二枚貝も多く見つかることからも分かります。地層に埋まるまで生きていた貝だから揃っているわけです。貝化石が含まれる地層は、足跡化石がつくような泥のみからなる泥岩ではなく、砂も割と混じっています。岩の色はグレー。明るいグレーだったり暗めのグレーだったりもします。

福井県立大学の現場実習
福井県立大学の現場実習

また今日は、福井県立大学の恐竜学実習の学生さんたちが訪れていました。現場でハンマー隊の学生さんたちと同じく岩を割って化石を探したり、現場の地層のスケッチをとったりしています。恐竜学研究所がある福井県立大学ならではの、スタッフによる実地指導。全員が研究者を目指すのではないのでしょうが、他ではできない良い経験になったことと思います。

といったところで今回のレポートはここまでとさせていただきます。ではでは。

(千秋利弘)

© 2016 Fukui Prefectural Dinosaur Museum.
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