こんにちは。千秋です。
福井恐竜発掘調査レポート2016。今年もはじめさせていただきたいと思います。
第四次恐竜化石発掘調査4年目となる2016年度調査が8月1日から、スタートしています。今年の調査予定は9月10日までの35日間。日曜日を除く毎日、発掘を行っています。現場レポートをはじめる前に、昨年までの成果を振り返ってみましょう。
アンキロサウルス類の足跡化石
恐竜博物館の調査研究ページを紐解きますと、昨年の発掘調査終了後に、2015年度第四次恐竜化石調査の成果報告を行っています。昨年の成果としてのメインは足跡化石面の発見で、アンキロサウルス類、獣脚類、鳥脚類の足跡化石が残されていました。特筆すべきなのはアンキロサウルス類の足跡で、ここ発掘現場では初めてのものです。国内では富山県からも発見されています。発掘現場ではフクイサウルスをはじめ6種の恐竜の存在が確認できていますが、アンキロサウルス類は初めてです。足跡化石だけでは具体的な姿を復元するのは困難ですが、アンキロサウルス類の骨化石や歯の化石が発見される可能性が出てきたということで、今後の調査で発見できれば福井の恐竜にまた新たな仲間を加えられるということで、とても楽しみですね。
また昨年はなんと昆虫の化石が発見されていました。化石は16点、いずれも数mm程度の小ささです。こんなに小さなものがよく残されていたとビックリしますね。化石がついている母岩は黒色泥岩で、以前も翼竜の足跡がついていたものと同様のものだと思われます。キメが細かくて混入物がほとんどない、板状に割れる岩相ですね。今回も発掘現場最前線の発掘隊員の観察眼による発見でしょう。前線作業をこなしながらの発見、素晴らしいものです。昆虫は動物の一種とはいいながら、脊椎動物ではないので、当館研究職員の研究領域には合致していません。おそらく関連研究機関と連携して、あらたな研究ネットワークを築くタネとなると良いですね。
福井県勝山市北谷産出の哺乳類化石を含む岩石
その他の研究系の動きといえば、昨年10月2日に勝山産哺乳類化石の論文公表、今年2月には小型獣脚類にフクイベナートルと学名がついたこと、今年6月には哺乳類の骨格化石が発見されたことです。哺乳類の骨格化石発見についてはテレビ・新聞等でも話題になりました。惜しむらくは発掘現場での発見ではないことで、調査状況とのすりあわせが困難であり、発見の層準を重点的に調べるとはいかないのです。仕方のないことですが。もちろん骨格がほぼまるまる残されていますので、恐竜時代の哺乳類の進化を解明するために第一級の標本であることは間違いありません。今後世界的にも評価されることでしょう。
毎年毎年、新たな知見が得られて、次への課題と期待が生まれてきました。昨年の調査の終了間際、第一次発掘調査で出ていたいわゆる「ボーンベッド層」らしきものが見えだしていました。つまり今年はそこから再開するわけで、昨年までの足跡面メインの調査から、骨化石メインの調査に変わる…のでしょうか。期待しつつ、発掘の様子を見守りたいと思います。