福井の恐竜時代の哺乳類化石論文公表について

2015年10月2日

福井の恐竜時代の哺乳類化石論文公表について

福井県立大学恐竜学研究所および福井県立恐竜博物館は、福井県勝山市北谷の手取層群北谷層(約1億2000万年前)から発見された2種2点の哺乳類化石に関する論文を、イギリスを本拠とする学術専門誌に発表しました(オンライン版10月1日;下記参照)。化石の概要は2013年に一般および学会にて公表されていますが(過去のプレスリリースのURL;下記参照)、その後の研究で2点は共に新種とする材料には欠けるものの、日本では知れていない種類であったことが明らかとなりました。

1点は断片的な歯が植立した右下顎骨の一部(1992年収集)で、国内3種目の真三錐歯類化石となります。マイクロフォーカスCTスキャナーを使った調査により、顎骨やその中にある歯の形状などから、日本では知られていない「トリコノドン科」と呼ばれる進歩的なグループに属する可能性があります。トリコノドン科は主に北米およびヨーロッパで化石が知られますが、アジアからは中国遼寧省のメイコノドンの2種、ボラティコテリウム1種(トリコノドン科ではないとする意見もある)が知られているにすぎません。もう1点はエオバータル科の多丘歯類の左第四小臼歯であり、石川県白山市のエオバータル科2種(ハクサノバータルとテドリバータル;下記参照)に次ぐ国内3種目の多丘歯類化石です。上記白山市の2種よりも1.5倍大きいことから別種とみられ、またアジア(中国)の既知の種とも異なります。

これら化石の詳しい分類学的位置について追加資料を必要としますが、北陸は恐竜だけでなく、恐竜時代の哺乳類についても多様化が見られ、アジアの哺乳動物相の解明においても重要な地域となります。

論文タイトル
New mammalian specimens from the Lower Cretaceous Kitadani Formation, Tetori Group, Fukui, Japan
〔下部白亜系手取層群北谷層から発見された新たな哺乳類の資料〕
http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/08912963.2015.1012509#.Vg2oZZfrk8I
論文執筆者
Kazunori Miyata, Yoichi Azuma, and Masateru Shibata〔宮田和周・東 洋一・柴田正輝〕
掲載誌・巻号など
Historical Biology, vol. 28, Issue 1-2, p. 139-150〔ヒストリカル バイオロジー誌、28巻1-2号p. 139-150〕。
イギリスを本拠とする学術書出版社。Taylar & Francis Online。
2013年6月24日公表(過去のプレスリリース)の資料
http://www.dinosaur.pref.fukui.jp/research/201306excavation/

標本画像・参考復元画

マイクロフォーカスCTによる化石の画像

マイクロフォーカスCTによる化石の画像 画像提供:福井県立恐竜博物館
右上:エオバータル科多丘歯類の左下顎第四小臼歯:長さ約4.8mm×高さ約3.2mm
下:トリコノドン科とみられる真三錐歯類の右下顎骨の一部:長さ約11.7mm

福井県勝山市の手取層群北谷層から産出した哺乳類の想像図

福井県勝山市の手取層群北谷層から産出した哺乳類の想像図
手前右:エオバータル科多丘歯類、中央:真三錐歯類
画像提供:山本 匠

発表に関する参考

日本の恐竜時代の哺乳類化石は、これまで熊本県御船町(1種)、石川県白山市(4種)、福井県勝山市(1種)、兵庫県篠山市(1種)の4か所7種が知られている。これらは歯や、歯が植立した顎といった化石から知られるが、歯の特徴は種類の識別に役立つ。恐竜時代の哺乳類は、数種の例外的なものを除けば、現在のネズミのような小さな姿のものばかりである。多丘歯類は小型の絶滅草食哺乳類(一部は雑食)であり、上下の顎に長い切歯を持つなど、現在のネズミ類に似る。石川県白山市白峰の桑島層からは、2種のエオバータル科の多丘歯類(ハクサノバータル・マツオイ、テドリバータル・ライニ)と2種の真三錐歯類(ハクサノドン・アルカエウスと属種未定種)が報告され、これらは日本最古の哺乳類化石である。福井県勝山市北谷からは、スパラコテリウム科の相称歯類(シンメトロレステス・パルヴス)が2004年に論文で報告された。真三錐歯類と相称歯類は共に食虫性の絶滅哺乳類である。

トリコノドン科

20種ほど(19種、ないし23種)からなる真三錐歯類の進歩的なグループ。主に陸上で生活する食虫性の小型哺乳類。ジュラ紀から白亜紀にかけての北米(アメリカ・カナダ)とヨーロッパ(ポルトガル、フランス、イギリス)で主に化石が知られるが、研究者によってはモロッコ(白亜紀前期)、メキシコ(ジュラ紀)、アルゼンチン(ジュラ紀)にも化石が知られ、水中生活や滑空に適応した種もいたとされる。アジアでは中国から白亜紀前期のメイコノドン2種、およびジュラ後期のボラティコテリウム1種(トリコノドン科でないとする意見もある)のみが知られる。このような小型哺乳類の化石は、当時の大陸間の動物進化や移動経路を知る上で重要とされる。


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