■コラートに恐竜ブームがやってきた?!

前線で大きな骨が見つかったところ

今年の発掘調査もとうとう終盤を迎えています。3年間の発掘調査もいよいよ最終年度。連日、重要そうな標本も見つかっていて、現場はとても活気にあふれています。こうしてタイで発掘される恐竜たちが、私たちの暮らすアジア地域の恐竜の歴史を知るためにとても重要だということは、これまでの記事からもずいぶん知られるようになってきたのではないかと思います。では、ここタイでは地元から発見された恐竜のことがどれだけ知られているのでしょう?

現場で取材を受けるタイの博物館スタッフ

少し前の記事にもあったように、タイでも日本同様に恐竜は人気者で、町には様々な恐竜グッズがあふれています。それを反映するかのように、今回の発掘では、発掘現場の様子を報道しようというタイのマスメディアが何組も現地を訪れました。タイで恐竜が発見されていることは、このようなメディアを通じて、十数年前から少しずつ一般に知られるようになってきたそうです。なかでも、同じコラート高原にある「カラシン」や「プーウィアン」は有名で、タイ王国鉱物資源局(日本の地質調査所にあたる)が作った恐竜専門の博物館があり、見つかった化石や発掘現場を見学することが出来ます。私たちの発掘の相手方である珪化木鉱物資源博物館のスタッフによると、この共同発掘を通じて、ここナコーン・ラチャシーマ付近でも恐竜が出ることがずいぶんと知られるようになり、たくさんの方が博物館を訪れるようになっているのだそうです。

ダイノソー・キャンプの様子
発掘現場で説明を受ける参加者

さまざまな年代に幅広い人気のある「恐竜」を通じて、生き物や大地の生い立ち、さらには自然への興味関心をはぐくもう、というのがわたしたち恐竜博物館の大きな目標の一つですが、ここ珪化木鉱物資源博物館でも、展示や行事を通じ様々な啓発活動を行っています。その一環として、同館では今年、恐竜化石の発掘体験、恐竜や化石についての学習を行う「ダイノソー・キャンプ(恐竜キャンプとでも訳すのでしょうか)」を開催しています。これまでに4回(全5回の予定)のキャンプが開催されましたが、いずれも2泊3日、講義や実習など盛りだくさんで、おまけに博物館(残念ながら展示室ではないのですが)で宿泊するという力の入れよう。バンコクをはじめ、タイ国内の様々な場所から、あるときは小学校低学年の児童、またある時は高校生といったように参加者も多様で、みな熱心に参加しているのがとても印象的でした。また、この活動には近隣の大学の先生や高校生がボランティアとして参加しており、タイの人たちの市民パワーを感じることもできました。

博物館でのクリーニング体験
クリーニング体験をする親子

同館では今後もこうした活動を継続していくとのこと。このような活動を通じて、未来の恐竜研究者が育っていくのかもしれないと思うと、この発掘が、学術面だけでなく、様々な意味でよい国際交流になっているのだなあ、と感慨深いものがありました。

(矢部 淳)