恐竜・古生物 Q&A
三葉虫の視力はよかったの?
三葉虫は最初に視力をもった動物のひとつであり、数億年前にさまざまな工夫を行っていた、という証拠はいろいろあります。しかし、視力が優れていたのかどうかについてはお答えすることができません。三葉虫の眼の化石として現在確認されているのは「レンズ」に相当する部分、人間の眼でいうと水晶体の部分だけだからです。しかし、視力の良し悪し(つまり画像解析能力の優劣)に関係する化石の情報はまったくありません。例えば、色を認識できたかどうかということも、「レンズ」のみでは判断できないのです。
手がかりとして、「レンズ」部分は結晶質の炭酸カルシウムでできていました。鉱物の結晶には、それぞれに独自の「光学的特性」があります。三葉虫の眼の形や工夫にも、素材のもつ特性によって、形の変化や工夫に対する制約があるはずです。つまり、結晶質炭酸カルシウムの「光学的特性」から、三葉虫は「視覚」の特化や分化(特殊 化やさまざまな工夫)を行うのに適していたのではないか、と想像できます。まだまだ研究の余地のある分野です。
【回答は三葉虫の専門家である鈴木雄太郎先生(静岡大学理学部地球科学科)にご協力いただきました。】
三葉虫のなかま・ファコプスの化石。写真右側が頭で、側面に眼が付いています