恐竜・古生物 Q&A
三葉虫の足の化石がなかなか発見されないのはなぜ?
三葉虫は、エビやカニと同じく節足動物のなかまです。貝などとは違い、節足動物は体の各部分が殻でおおわれており、鎧を着ているようなものです。鎧を着ているということは、動けるように鎧のあわせ部分を複雑な形にする必要があります。そこで節足動物のほとんどは、ある程度硬くて形を整えやすい特徴をもった素材(生体鉱物)を利用することで、鎧のような殻(外骨格)を作り上げている、と考えてください(具体的には生体高分子(タンパク質の仲間)や非晶質の生体鉱物を用いています)。しかしながら、わずかですが例外もあり、結晶質の炭酸カルシウムを用いる節足動物もいます。非晶質はとても不安定な構造で、すぐにぼろぼろになってしまいますが、結晶質は時間の経過にも耐えられます。結晶質炭酸カルシウムの殻をもつ節足動物の例として、化石になりやすい三葉虫の殻の部分、介形虫の甲羅、フジツボの殻などが知られています。しかしながらこれらの生き物でも、肢などの部分は不安定な素材(生体高分子や非晶質の炭酸カルシウム)でできているので、化石として非常に保存されにくいということになってしまいます。
つまり、三葉虫の肢が残りにくいのではなく、三葉虫が背負っている殻が節足動物としては例外的に化石として残りやすい特徴をもっている、と言えます。
【回答は三葉虫の専門家である鈴木雄太郎先生(静岡大学理学部地球科学科)にご協力いただきました。】
三葉虫のなかま・ファコプスの化石。肢は化石として保存されにくく、この化石でも殻だけが残っています