獣脚類の上顎骨(頭骨の一部)発見について
恐竜博物館では、第三次恐竜化石発掘調査により昨年発見されました小型獣脚類の化石を含む岩石のクリーニングおよび調査を進めたところ、新たに上顎骨(頭骨の一部)の化石が発見されましたので、報告いたします。
報告の概要
新たに発見された上顎骨(頭骨の一部)について
昨年、8月21日に発掘された小型獣脚類の化石が保存されている岩石(約50cm×40cm)から、新たに上顎骨(頭骨の一部)がクリーニングによって明らかになった。発見された位置関係などから今回発見の上顎骨とこれまでに確認されている仙椎や趾骨などは同一個体のものと考えられる。今回発見の上顎骨は歯が4本保存されたほぼ完全なものであり、我が国初の発見である。
一般公開について
- 対象
- 上顎骨(頭骨の一部)、仙椎、肋骨、趾骨などの実物化石
小型獣脚類骨化石の産出状況のレプリカ - 期間
- 2008年8月1日㈮から8月31日㈰まで
- 場所
- 恐竜博物館1階「日本各地の恐竜化石」コーナー
<参考>
- 調査年度
- 2007年度(平成19年度)から2010年度(平成22年度)まで
- 調査場所
- 勝山市北谷町杉山 恐竜化石発掘現場
- 調査面積
- 全体面積 約1700㎡(骨化石層 900㎡、足跡化石層 800㎡)
- 調査関係者
- 福井県立恐竜博物館職員、県内外恐竜化石研究者、
地質学系大学生・大学院生 - ホームページ
- 福井県立恐竜博物館ホームページ「千秋学芸員の恐竜発掘日誌」
獣脚類の上顎骨(頭骨の一部)発見について
昨年度の第三次恐竜化石発掘調査期間中に発見された小型獣脚類が保存された岩石の中から、新たに上顎骨(頭骨の一部)がクリーニングによって明らかになった。保存されていた岩石は、約50cm×40cmの大きさで仙椎や趾骨などがこれまでに確認されていた。発見された位置関係などから上顎骨と仙椎や趾骨などは同一個体のものと判断される。
上顎骨について
確認された上顎骨は、右側のもので前後の長さ9.7cm、高さ3.9cmで4本の歯が保存されている。保存されている歯の最大のもので長さ1.5cm、幅0.6cm、最小のもので長さ0.8cm、幅0.4cmである。
クリーニングされた骨格について
昨年来クリーニングを続けてきたが、これまでに以下の骨についてほぼ完了した。
意義
獣脚類の骨化石は、北海道や熊本など全国各地で発見されている。しかし、これまで頭の骨が発見されているのは福井県と熊本県であるが、上顎骨は福井県のフクイラプトルの断片的なものがあった。今回発見された上顎骨は歯が4本保存されたほぼ完全なものであり、このような標本は我が国初の発見である。現時点では未だ種類の特定には至らないが、上顎骨の特徴からドロマエオサウルス類に属するものと考えられる。中国遼寧省から発見されているシノルニトサウルスなどいわゆる“羽毛恐竜”との関連が強く考えられる。いずれにしても、上顎骨やその他の体骨格の発見によって、種類の特定に大きく前進できるものと思われる。
保存状態が非常に良く、さらに採取した周囲の岩石にも多くの骨化石が含まれていることから、今後さらに頭骨の別の部位などの発見につとめ、全身骨格の復元をめざしたい。
参考:シノルニトサウルスについて
シノルニトサウルス復元模型
シノルニトサウルスは、1999年に中国科学院古脊椎動物古人類研究所の徐星(シュウ・シン)博士らによって命名された。学名は「中国の鳥トカゲ」という意味で、中国名は中華鳥竜と訳されている。小型獣脚類ドロマエオサウルス類の一種である。発見されたのは、中国遼寧省西部の白亜紀前期の地層である。シノルニトサウルスは、全長約1メートルほどで、全身が羽毛に覆われ、特に前肢には羽がある。分類学的には、ドロマエオサウルス類の原始的な位置づけであるが、頭骨や肩甲骨などは始祖鳥などの原始的鳥類と似ているとされる。