2008年度 第三次恐竜化石調査の中間結果について
2008年7月14日から9月6日まで行われた2008年度第三次恐竜化石発掘調査においては約800点の恐竜を含む脊椎動物化石と良好な足跡化石保存面2面が発見されました。その結果等について報告します。
2008年度 第3次恐竜化石調査の概要
2008年6月末から掘削作業と事前調査を開始し、7月14日からは調査員・調査補助員を加え本格的な発掘調査を行った。調査対象とした地層は以下の通り。
- 1.昨年度竜脚類化石が産出した細粒砂岩層
- 2.その下位の足跡化石層
- 3.以前の発掘調査で多くの恐竜化石(フクイラプトルやフクイサウルスなど)を産出した骨化石含有層
1.の地層からは竜脚類のものと考えられる大型の骨化石を発掘した。2.の足跡化石層は、今回の調査で2層の良好な化石面を発掘した。また、3.の骨化石含有層からは小型の鳥脚類の下顎やワニの歯などの脊椎動物化石を発掘した。
- 調査期間
- 2008年7月14日から9月6日まで(55日間)
- 調査地
- 勝山市北谷町杉山 恐竜化石発掘現場
- 調査面積
- 約500㎡
- 参加人数
- 延べ 約900名
(福井県立恐竜博物館職員、県内外恐竜化石研究者、地質学系大学生・大学院生) - 化石点数
- 脊椎動物化石 約800点
発見された骨化石について
- 種類
-
- 恐竜(クリーニングなどにより現時点で確認されたもの)
- 竜脚類(脊椎骨、腓骨 、歯など) 約10点
- 獣脚類(歯) 2点
- 鳥脚類(上顎骨 、歯骨 、歯) 4点
- 足跡化石 約100点
- その他
- ワニ類(歯など)約90点
- カメ類(背甲など)約100点
- その他未確認脊椎動物化石(恐竜も含む) 約500点
- 恐竜(クリーニングなどにより現時点で確認されたもの)
- 地層
- 手取層群赤岩亜層群北谷層(白亜紀前期、約1億2000万年前)
重要な化石について
鳥脚類化石
歯骨(下あごの骨);長さ7.7cm、幅1.2cm、高さ3.2cm。右の歯骨(下あごの骨)である。破壊や変形を受けておらず、保存状態は非常に良い。歯は1つのみ保存されている。歯やあごの骨の形の特徴などからイグアノドン類に属すると推定される。また、イグアノドン類であるフクイサウルス(左の歯骨の長さ約26cm)と比べて、非常に小さい。
上顎骨(上あごの骨);長さ約17cm、高さ約5cm。ほぼ完全に保存されており、歯は13個確認できる。また咬耗面(噛み合わせによりすり減った面)のある歯もある。イグアノドン類のものと考えられるが、過去に報告されているフクイサウルスのものより小さい。
竜脚類化石
昨年、竜脚類の化石が発見されたのと同じ地層から大型の骨化石を数点、発見した。いずれもクリーニング作業中で部位などの詳細については未定であるが、脊椎骨と思われるものが2点認められた。1つは長さ約50cm×幅約30cm、他方は長さ約12cm×幅約20cmで両標本とも他の脊椎骨と関節する部分が保存されている。
足跡化石
足跡化石層としては、保存良好な足跡面としては上下2面を発掘した。A面(下層)は横約6m、縦約2mで、B面(上層)は横約6.5m、縦約3mである。A面には63個の足跡化石が保存され、その内少なくとも5個の獣脚類と15個の鳥脚類の足跡が確認された。また、B面には41個の足跡化石があり、11個の獣脚類と12個の鳥脚類の足跡が確認された。さらに、A面とB面にはリップルマーク(漣痕 )も確認でき、恐竜が流れのある河川の岸辺付近を移動したことを物語っていると考えられる。
意義と今後の展望
進化的なイグアノドン類であるハドロサウルス類では子どもから大人までの化石記録が知られており、研究も進んでいるが、原始的なイグアノドン類の幼体の報告は世界的にほとんどない。今回発見された標本は7.7cmと非常に小さく、国内では、ほぼ完全に保存された鳥脚類の歯骨(下あごの骨)化石としては最も小さく、イグアノドン類としては初めての発見である。また、今回の発見は原始的なイグアノドン類の成長段階を知る上では貴重な資料となる。
さらに、竜脚類の脊椎骨や他の部位と考えられるものが発見され、昨年発見された竜脚類と同じ個体のものと考えられることから、竜脚類の種類の特定に重要なものと思われる。
恐竜の足跡化石面の発見により、恐竜たちの移動方向なども明らかになり恐竜生息当時の古環境復元に参考になるものである。今後、足跡の種類と骨化石との関連について検討を重ねてゆきたい。
今後は発掘された多量な化石資料を慎重なクリーニング作業を進めていき、新たな恐竜化石の確認を急ぎたい。