長崎県松浦市鷹島町産出のサイ科化石について
松浦市教育委員会と福井県立恐竜博物館は、松浦市鷹島町(鷹島)の海岸から発掘されたサイ科の部分骨格化石を初公開します。
発見されたサイ科化石について
化石は約1800万年前のものと考えられ、発掘当初から大型草食獣のものと判明していましたが、詳しい種類やその概要は不明でした。発掘調査の結果、化石は同一個体のもので、保存の悪い断片的なものも含めれば約100点あり、背骨の大部分(頸椎、胸椎、腰椎、仙椎)、骨盤の一部(腸骨の一部)、肋骨、手(前あし)の甲の骨(中手骨)、すね(脛骨、腓骨)、かかと(踵骨)、足首(距骨などの足根骨)、足(後ろあし)の甲の骨(中足骨)、指の骨など約60点は部位が判別できるものです(このうち約50点を公開します)。
頭部こそありませんでしたが、およそ全身の4分の1に相当する部分が発見されたこととなります。化石は国内のサイ科化石としては最古級のものであり(岐阜県にほぼ同時期のサイ科の化石が知られています)、同時期の国内におけるサイ科の化石としては保存部位が最も多いものです。このサイは体長約2.4m、肋骨から見積もられる胴回りは約2.2mとなり、四肢はサイ科の中でもやや短いものです。おそらく沼沢地に生息する絶滅した種類と考えられます。東アジアでは約1800万年前のサイ科化石は数種程度しか知られておらず、資料もほとんどありません。このため、松浦市の化石は国内に限らず、アジアにおいても貴重な資料といえます。
化石は松浦市と恐竜博物館の共同研究事業として、2009年11月および、2010年5月、6月に計21日間かけて発掘されました。発掘時期などは以下の経緯を参照ください。発掘後は恐竜博物館に運ばれ、2010年6月~2011年11月にかけて化石の剖出作業(化石クリーニング)が行われました。今回の化石資料は以下のスケジュールで松浦市と福井県で一般公開され、2012年1月の日本古生物学会例会において報告されます。
長崎県松浦市市役所1階ロビー | 2012年1月14日㈯~1月26日㈭ |
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福井県立恐竜博物館 | 2012年2月1日㈬~3月25日㈰ |
長崎県松浦市立鷹島埋蔵文化財センター | 2012年3月30日㈮から常設公開(予定) |
サイ科化石の標本写真・発見部位・復元図
公開される長崎県松浦市鷹島町産出のサイ科化石(約50点)
産出化石の部位(黄色の部分)を示す図。肋骨、指骨はおおよその位置
松浦市鷹島町産出のサイ科化石の復元図。
画像提供:松浦市/画:山本 匠
発見から発掘までの経緯
- 2000年12月
- 熊本大学の大学院生だった鵜飼宏明(天草市立御所浦白亜紀資料館学芸員)が、化石のごく一部が露出していたのを発見。
- 2009年4月9日
- 鵜飼宏明、平山 廉(早稲田大学国際教養学部教授)、辻 茜(佐賀県立宇宙科学館職員)、松尾朋子(佐賀県立宇宙科学館職員)、不動寺康弘(化石愛好家・佐賀県唐津市赤十字病院臨床検査技師)、薗田哲平(茨城大学大学院院生)が鷹島町の地質調査時に当該化石の発見場所を訪れ、試掘を行う。大型哺乳類化石であることが判明し、三枝春生(兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)へ連絡。
- 2009年5月22日
- 化石の発掘と研究について、宮田和周(福井県立恐竜博物館主任研究員)および仲谷英夫(鹿児島大学大学院理工学研究科教授)に連絡。
- 2009年6月1日
- 長崎県文化・スポーツ振興部 藤泉部長より松浦市へ化石発見の経緯報告。
- 2009年9月16日
- 松浦市が発掘・研究の予算を計上し、市議会定例会で議決。
- 2009年10月6日
- 発掘現場にて発掘方法、および時期について関係者らと協議。
- 2009年11月11~16日
- 第1回目の発掘。宮田和周、鵜飼宏明、三枝春生、仲谷英夫、加藤敬史(倉敷芸術科学大学生命科学部准教授)、鹿児島大学学生5名、松浦市教育委員会3名が発掘に参加。
- 2010年5月11~12日
- 第2回目の発掘。本格的発掘の準備作業。化石上位の砂岩層除去作業のみを実施。
- 2010年5月23~28日
- 第3回目の発掘。宮田和周、鹿児島大学学生8名、松浦市教育委員会3名が発掘に参加。
- 2010年6月22~28日
- 第4回目の発掘。宮田和周、鵜飼宏明、加藤敬史、鹿児島大学学生4名、松浦市教育委員会2名が発掘に参加。