タイ王国での共同発掘調査はじまる!
恐竜博物館は2011年度から4ヶ年の計画で、タイ王国珪化木鉱物資源東北研究所(タイ王国ナコーン・ラチャシーマ県)との共同発掘調査を再開しました。(調査レポート後半はこちら「タイ恐竜発掘調査レポート2012」をご覧ください。)
発掘の意義と調査地の概況
このプロジェクト(第2次日タイ恐竜プロジェクト)は2007年度~2010年度にかけて行った発掘調査の後継プロジェクトで、これまでに発掘を行ってきた、タイ王国東北部のナコーン・ラチャシーマ県ムアング区スラナリー地区において、恐竜化石の追加標本採集を目指すほか、あらたに、北隣のチャイヤプーム県においても発掘調査を行います。チャイヤプーム県には、アジア最古の恐竜化石が発見されている三畳紀後期のナム・フォン層が分布しています。同地区では1998年にイサノサウルスという竜脚類が発見されていますが、ほかにも獣脚類のものと考えられる足跡化石が発見されるなど、未発見の恐竜化石がまだ数多く眠っていると予想されています。このプロジェクトでは初期の恐竜化石について、新たな情報を得ることが期待されます。
先発隊による準備~発掘作業
今年度の調査では、先発隊3名が1月22日に現地入りし、珪化木鉱物資源東北研究所のスタッフと共同で、まずはスラナリー地区での発掘地の選定や機材の準備を行いました。これまでの5年間は11月から12月にかけて発掘を行ってきたのですが、今回はじめて1~2月に発掘を行うことになりました。『冬』とはいえ、日中の暑さはいつものこと。ただ、今年は例年にない天候不順とのことで、日中も曇り空のことが多かったため、日中の暑さが少し和らぎ作業もはかどりました。
タイの発掘風景は、私たちが福井県勝山市北谷の発掘現場で行っている調査とは大きく違っています。日本では普通、崖を崩しながら発掘をするのですが、ここには崖らしいものは一つもありません。実は、目指す地層は広大な畑の下に眠っているのです。
先発隊の最初の仕事は、畑の土壌を取り除いて恐竜化石を含む地下の地層を露出させることでした。幸いなことに、今回の発掘地は土壌が薄く、骨化石をふくむボーンベッドの厚さも薄かったため、地層を露出させる作業が予想よりも短くて済み、開始から3日ほどで化石発掘作業に取りかかることができました。
一連の作業は、恐竜博物館の先発隊と現地研究所のスタッフに加え、現地作業員あわせて総勢30名ほどで行いました。現地作業員の多くは日タイ恐竜プロジェクトの経験者で、意思の疎通もうまくいき、スピーディかつスムーズに作業を進めることができました。こうした状況すべてが、過去5年間の日タイ両国スタッフの苦労の結晶だと思うと感慨深いものがあります。2月2日からは後発隊も合流し、さらにペースがあがってきました。このプロジェクトでいったいどんな新しい発見ができるか、私たちも非常に楽しみです。皆さんもぜひご期待ください!