勝山市の発掘現場から発見された恐竜に新しい学名が付けられました
福井県勝山市北谷の恐竜化石発掘現場から発見されたイグアノドン類が新種として認められ、学術雑誌「Zootaxa」に論文が掲載されました。
発表の概要
- 学名
- Koshisaurus katsuyama
(日本語表記 コシサウルス・カツヤマ)
- 名前の意味:
- 属名はKoshi(越の国)とsaur(ラテン語でトカゲを意味)
- 種小名は発掘現場が位置する勝山市に由来
- 産地
- 福井県勝山市北谷町 恐竜化石発掘現場
- 研究者
- 柴田正輝(福井県立大学講師・福井県立恐竜博物館研究員)
東 洋一(福井県立大学教授・福井県立恐竜博物館特別館長) - 論文
- New basal hadrosauroid (Dinosauria: Ornithopoda) from the Lower Cretaceuous Kitadani Formation,
Fukui, central Japan. (福井県の下部白亜系北谷層の新しい基盤的なハドロサウルス上科(恐竜類:鳥脚類)について)
掲載雑誌:Zootaxa 3914(4): 421-440 2015年1月29日発行
発表までの経緯について
2007〜2010年まで行われた第三次恐竜化石発掘調査では、フクイティタンや小型の獣脚類の全身骨格など新発見が相次いで報告された(2007年7月、10月、2008年3月発表)。さらにクリーニング作業の進行により、発掘した化石の中から、新たなイグアノドン類化石も明らかになった(2011年4月発表)。
この2011年に確認され発表したイグアノドン類化石は、フクイサウルスとは別種であることは明らかながら新種として区別できる標本ではなかったため、“フクイサウルスとは別種のイグアノドン類”という報告にとどめていた。
今回、2008年の第三次発掘調査で発見されていたイグアノドン類の上あごの骨化石が、比較研究の結果、フクイサウルスとは別種の新種であることが明らかになり、学術雑誌に掲載され、新属新種「Koshisaurus katsuyama(コシサウルス・カツヤマ)」として学名が認められることになった。
化石について
- 分類
- 鳥盤目 ハドロサウルス上科 ※ハドロサウルス上科はイグアノドン類の中の進化的なグループのこと
- 時代
- 白亜紀前期(約1億2000万年前)
- 地層
- 手取層群北谷層
- 発見場所
- 勝山市北谷町 恐竜化石発掘現場
- 発見時期
- 2008年8月
発見部位
- 上顎骨(右)
- 169×31.2×48.5
- 軸椎
- 63.7×38.3×40.8
- 胴椎
- 44.6×53.2×47.0
- 恥骨(左)
- 158×27.9×77.1
- 大腿骨(左)
- 117×96.9×98.2
(長さ×幅×高さ 単位はmm)
特徴
コシサウルスは、上顎骨の歯の舌側(内側)が角張っていることが特徴の一つで、その他、前眼窩窓があることや左の上顎骨との関節部の溝が浅いことなどがフクイサウルスと異なる。分類学的な分析の結果、フクイサウルスは、ヨーロッパのイグアノドンやスペインのプロアに近縁なハドロサウルス形類で、コシサウルスは比較的進化的でアジアで発見されている種類に近縁なハドロサウルス上科というグループに入ると考えられる。
意義
コシサウルスとフクイサウルスがいた白亜紀前期は、ヨーロッパや北米にいた原始的なイグアノドン類が、アジアへと生息域を広げ、多様化する時代である。しかし、その化石記録は中国やモンゴルなど大陸内部のものが多く偏りがあった。今回の発見により、アジア大陸東縁にも多くのイグアノドン類が存在していたことを示す重要な証拠を示すことができた。
また、国内でイグアノドン類の化石は多く発見されているが、1箇所から2種類が確認されたことはまだなく、北谷の恐竜化石発掘現場から発見される恐竜の豊富さがあらためて認識されることとなった。
今後は、現在行われている第四次恐竜化石発掘調査から、より完全な個体の発見をめざし、コシサウルスおよびフクイサウルスの全体像を明らかにしていきたい。
その他
イグアノドン類とは
イグアノドン類は、主に白亜紀(1億4500万年前〜6600万年前)に繁栄した植物食恐竜で、たくさんの歯が密に並んで植物を切り裂く面を形成しているのが特徴。ヨーロッパで発見されたイグアノドンに代表される。コシサウルスはイグアノドン類の中でも進化したグループ、ハドロサウルス上科に含まれると考えられる。
学術雑誌「Zootaxa」について
動物の分類学的研究を主に掲載する英文学術雑誌。2001年に創刊され、26,000種以上が本雑誌より報告されている。
標本画像・参考復元模型
コシサウルスの発見部位
コシサウルスの生体復元模型(模型制作:荒木一成)
備考・展示公開
日本の新種恐竜
- 2000年
- フクイラプトル・キタダニエンシス(福井県)
- 2003年
- フクイサウルス・テトリエンシス(福井県)
- 2009年
- アルバロフォサウルス・ヤマグチオロウム(石川県)
- 2010年
- フクイティタン・ニッポネンシス(福井県)
- 2014年
- タンバティタニス・アミキティアエ(兵庫県)
展示公開
2015年3月12日㈭より博物館1階「福井の恐竜」コーナーで展示