日本最古のヨロイ竜類の歯化石の発見について
2017年7月31日から9月9日まで行われた第四次恐竜化石発掘調査(2017年度)で、ヨロイ竜類の歯が2点発見されました。これはヨロイ竜類の化石では国内最古級のもので、また歯の化石としては国内最古のものです。さらに詳しくこの歯を見ると、ノドサウルス科のものであると推定されます。これらの歯化石は、約1億2000万年前までには、極東アジア地域にヨロイ竜類が生息していたことを裏付けるもので、ヨロイ竜類の地理的分布や放散、進化を理解するための貴重な証拠になると思われます。
産地
福井県勝山市北谷 恐竜化石発掘現場 手取層群赤岩亜層群北谷層 (白亜紀前期 約1億2000万年前)
発見
2017年(2017年)8月、9月
発見標本
今回発見されたヨロイ竜類の歯化石は次の2点
- 長さ約24mm、幅約5.5mm、厚さ約3.5mm(歯根がほぼ完全な状態で保存されているものの歯冠の上部がやや欠けている)。
- 長さ約10mm、幅約6mm、厚さ約3mm(歯根はほぼ失われているが、歯冠は完全な状態で保存されている)。
前者には頬側に、後者には舌側に咬耗面が見られるため、それぞれ下顎歯、上顎歯であるとわかります。歯冠の形態は2点とも似ていることから、同じ種類のヨロイ竜類の歯である可能性があります。これらの歯化石は、三角形の形状や、大きな咬頭、非常に長い歯根といった点でヨロイ竜類の歯と同定されました。ヨロイ竜類はさらにノドサウルス科とアンキロサウルス科に細分されますが、歯全体が刀身のような形で、比較的咬頭の数が少なく、複雑な歯冠で、歯冠の根元部分に発達した歯帯が頬側にあることなどから、特にノドサウルス科のものであると推定されます。
展示について
- 場所
- 恐竜博物館3階 特別展示室 2017年度秋冬企画展「鎧をまとった恐竜たち」内
- 期間
- 2017年11月17日㈮~2018年1月21日㈰
北谷産ヨロイ竜の歯化石の意義
これまで日本から発見されているヨロイ竜類の化石は以下の通りですが、今回発見された化石はヨロイ竜のものとしては国内最古級(体化石としては最古)のものです。
1)北海道夕張市 | ヨロイ竜類ノドサウルス科の化石(頭骨の一部、頸の骨、11点の歯、約9500万年前) |
---|---|
2)熊本県御船町 | 歯1点(約9000万年前) |
3)富山県富山市 | 足跡(約1億2000万年前) |
4)兵庫県丹波市 | 歯1点(約1億1000万年前) |
5)長崎県長崎市 | 歯1点(約8100万年前) |
6)福井県勝山市 | 足跡(約1億2000万年前) |
また白亜紀前期のアジア地域において、ヨロイ竜類の化石はあまり多くは知られておらず、当時のヨロイ竜の世界的な分布や進化を考える上で、今回の化石は非常に重要な情報をもたらすものと考えられます。
来年度以降、北谷恐竜発掘現場での発掘を続ければ、頭骨や装甲板などの追加標本を発見できる可能性もあり、勝山市に生息していたヨロイ竜のより詳細な復元や、福井県の白亜紀前期における動物相の理解が進むことが期待されます。
標本写真等
図1.今回発見されたヨロイ竜類の歯化石2点。
画像提供:福井県立恐竜博物館
図2.ノドサウルス科の代表種、エドモントニア(全長約6m)の生体復元模型
模型制作:荒木一成、画像提供:福井県立恐竜博物館
図3.ノドサウルス科の系統樹
画像提供:福井県立恐竜博物館