熊本県天草市の新たな大型肉食恐竜化石について

2017年7月5日

天草市立御所浦白亜紀資料館と福井県立恐竜博物館との共同調査により、熊本県天草市天草町で大型獣脚類(肉食恐竜)の歯の化石を発見しました。この標本は天草市立御所浦白亜紀資料館の特別展で実物化石が、福井県立恐竜博物館では複製が展示されます。

概要

天草市天草町(図1)に分布する白亜紀後期の姫浦層群ひめのうらそうぐん軍ヶ浦層いくさがうらそう(別名:宮野河内層/カンパニアン中期:約8000万年前)から、大型獣脚類(肉食恐竜)の歯の化石が、天草市立白亜紀資料館と福井県立恐竜博物館による共同調査により発見されました。天草市においては、御所浦町から1997年に発見された国内最大級の肉食恐竜の歯(御所浦層群ごしょうらそうぐん烏帽子層えぼしそう:約1億年前)に次ぐ大きさで、ティラノサウルス科に類似する特徴が見られます。新たな化石は九州の白亜紀後期における恐竜の多様性と広がりを知る上で重要な資料となります。

化石は天草市天草町の海岸で、2014年10月19日の共同調査の際に収集された転石から発見されました。化石は歯冠部分のみで、高さ(長さ)42mm、幅25mm、厚さ16mmであり(図2)、母岩に残された印象の痕跡から歯は高さ56mm以上もあったことが判明しています。歯の前後の縁に獣脚類の特徴となる鋸歯きょしがあり(図3)、先端から基部へと向かう鋸歯列の方向などから、歯は左上顎ないし右下顎の歯と考えられます。一般に歯の化石のみで獣脚類の種類や大きさを特定することは困難ですが、ふくらみのある楕円形の歯の水平断面はティラノサウルス科の特徴に類似し、全長7mを超える大型獣脚類のものと推定されます。なお、天草市天草町および河浦町にかけての軍ヶ浦層からは、1997年にも植物食の恐竜化石(竜脚類の歯と鳥脚類の足跡化石)が発見されており、天草市からさらに多様な恐竜化石が得られる可能性があります。

参考1)国内における肉食性の獣脚類化石と熊本の特色

肉食性の獣脚類化石は岩手、福島、群馬、富山、石川、岐阜、福井、和歌山、兵庫、福岡、熊本(御船町と天草市)、長崎、鹿児島の白亜紀の地層から広く発見されています。このうち、ティラノサウルス科の記録が知られる白亜紀カンパニアン以降(約8360万年以降)のものは、熊本県天草市と鹿児島県薩摩川内市に分布する姫浦層群、および長崎市の三ツ瀬層みつせそうから産出したものです。姫浦層群初の獣脚類化石(歯と肋骨/2008年)は鹿児島県薩摩川内市下甑島から発見され、長崎市の三ツ瀬層からは2013年以降に複数種の獣脚類の歯が発見され、ティラノサウルス科の歯(2014年)も発見されています。熊本県側の姫浦層群からは今回が確実な獣脚類の化石となりますが(2012年に上天草市の姫浦層群から獣脚類の可能性がある指の骨の一部が報告されている)、熊本ではより古い御所浦層群(約1億年前:天草市)そして御船層群(約9000万年前:御船町)の時代にも種類の異なる大型獣脚類の化石記録があり、新しい化石はこれらの時代を通じて熊本に多様な大型獣脚類が生息しつづけていたことを裏付ける資料となります。

参考2)九州西部における白亜紀後期カンパニアンの恐竜化石

熊本県の天草市御所浦(御所浦層群:約1億年前)、および御船町(御船層群:約9000年前)では、白亜紀前期の末から後期の前半にかけての恐竜化石産出が良く知られていますが、近年ではより新しい時代の恐竜化石が九州西部から報告されています。天草市天草町から河浦町にかけては竜脚類(歯)と鳥脚類(足跡)の化石が、鹿児島県薩摩川内市下甑島からは獣脚類(歯と肋骨)、竜脚類(歯)、角竜類(歯根の一部)の化石が、さらに長崎市の三ツ瀬層からは小型から大型の獣脚類(歯)、ハドロサウルス科の鳥脚類化石(大腿骨の一部)、鎧竜(歯)の化石が知られており、これらは全てカンパニアン(英語名:Campanian)という時代のものです。

展示公開予定

発見された実物化石と複製は、下記の予定で天草市と福井県立恐竜博物館にて一般公開されます。

天草市立御所浦白亜紀資料館
2017年7月15日㈯~9月3日㈰ 特別展「恐竜展 ―トリケラトプスの仲間とその進化―」で実物化石を展示。
福井県立恐竜博物館:
2017年7月15日㈯~10月15日㈰ エントランスホール1F(予定)で複製を展示。

標本画像

図1.化石の発見地(熊本県天草市天草町)
図1.化石の発見地(熊本県天草市天草町)。
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館
図2.天草市天草町から発見された、大型獣脚類の歯。
図2.天草市天草町から発見された、大型獣脚類の歯。左:歯の外側、中:内側、右:ふくらみのある楕円形の水平断面
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館
図3.天草市天草町から発見された、大型獣脚類の歯の鋸歯。
図3.天草市天草町から発見された、大型獣脚類の歯の鋸歯。
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館
図4.参考図 白亜紀後期カンパニアンのティラノサウルス科の一種、ゴルゴサウルスの骨格(左/画像提供:福井県立恐竜博物館)とその復元イラスト(右/画像提供:山本 匠)

福井県立恐竜博物館

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