西海市から発見された世界最古級のペンギンモドキの化石について

2020年8月18日

西海市教育委員会と福井県立恐竜博物館の共同調査により、長崎県西海市大瀬戸町からペンギンモドキ(プロトプテルム科の鳥類)の化石2点が発見され、うち一つは世界最古級のものとなる約3400万年前のものと判明しました。これらは共にアジアにおける初期の同科の多様性を示す重要な資料です。

発見された化石について

  1. 右大腿骨(太ももの骨)
    標本番号
    SM-SKT-940
    大きさ
    長さ13.7cm×最大幅4.2cm×厚さ1.5cm
  2. 右脛足根骨の遠位部(かかとの骨の一部)
    標本番号
    SM-SKT-1153
    大きさ
    長さ5.9m×最大1.9cm×厚さ2.1cm

所蔵はいずれも西海市

化石の研究論文

論文名
Early Plotopteridae specimens (Aves) from the Itanoura and Kakinoura Formations (latest Eocene to early Oligocene), Saikai, Nagasaki Prefecture, western Japan
(長崎県西海市の板浦層と蛎浦層から産出したプロトプテルム科鳥類化石)
著者
森 浩嗣(西海市教育委員会/現:蒲郡市生命の海科学館)
宮田 和周(福井県立恐竜博物館)
雑誌名
パレオントロジカル・リサーチ(日本古生物学会)
2020年6月14日オンライン公開

研究の経緯と意義

2016年に当時西海市教育委員会社会教育課学芸員であった森 浩嗣(現・蒲郡市生命の海科学館学芸員)が同市大瀬戸町の海岸で、板浦層(いたのうらそう:約3400万年前)から大腿骨の化石を、蛎浦層(かきのうらそう:約3300万年前)からは脛足根骨の一部を発見しました。

CTスキャンでの調査を加えた研究で、2点共にプロトプテルム科の鳥類の化石と判明し、大腿骨の化石は、同科の最古の化石記録に匹敵する古い資料と判明しました。アメリカ合衆国と日本(福島県・佐賀県)でのみ、プロトプテルム科の最古とされる化石が報告されており、その最古の化石は、後期始新世末から漸新世初期までの期間(約3500~3350万年前の間)であることが判明しています。今回の大腿骨の化石はその範囲にある最古級のものです。新種であるかは判明していませんが、従来の最古とされるプロトプテルム科の種とは区別できる特徴もあり、プロトプテルム科は従来の想定よりも早い時期に、日本では多様化が起きていたことを示しています。もう一点の蛎浦層の脛足根骨は、わずかに新しい時代の化石ですが、大腿骨とは違ってアメリカ・ワシントン州の種と似た特徴があることが判明しています。プロトプテルム科が最初に現れた時期は、地球全体が暖かい時代から、南極に氷床ができて地球全体が寒冷へと大きく環境が変化する頃のものです。プロトプテルム科の初期の多様化は、当時の環境変遷と関りがあるものと考えられます。

参考情報

ペンギンモドキ=プロトプテルム科鳥類とは

ペンギンモドキはプロトプテルム科の鳥類のことであり、北太平洋沿岸に生息していたペンギンによく似た鳥類です。およそ1800万年前に絶滅しました。現在までにおよそ8属11種の報告があり、プロトプテルム科として分類される鳥類全体を「ペンギンモドキ」として国内では呼ばれ、ペンギンのように潜水して魚を捕らえていたと考えられています。また、呼び名の「ペンギン」とは関係なく、系統的にはおそらく鵜の仲間であったと考えられています。

最古級のプロトプテルム類と今回の発見

最古のプロトプテルム科の化石はアメリカと日本から知られます。どれが一番古いかは、各々の化石の正確な年代が得られていないので判然としませんが、アメリカではワシントン州とオレゴン州、日本では福島県いわき市と佐賀県武雄市から最古に並ぶ化石がこれまで発見されました。これら最古とされる化石は後期始新世末から漸新世初期にかけての範囲(約3500~3350万年前の間)にあることは間違いなく、北米とアジアのどちらに起源があるのかははっきりとしていません。一方、いわき市の化石では、複数の骨が発掘されましたが(1984年発見)、武雄市では叉骨1点のみ(2008年発見)でした。武雄市の化石は、プロトプテルムとしては大型のコペプテリクスではないかと考えられており、推定体長2m近くと見積もられています。

今回発見された大腿骨も、これらと同じ最古級のものですが、別種のものと考えられます。大腿骨には、幅広い大腿骨頭やそのくびれに特徴がありました。また、サイズもプロトプテルム類としては中型のものに属します。これらは、コペプテリクスとは異なる特徴であり、むしろアメリカで発見されているプロトプテルム類の特徴に似ています。

一方、脛足根骨の化石は、さらに小型の種類のもので、これまでに報告されたどのプロトプテルム類の脛足根骨よりも小さなものです。脛軟骨滑車横に発達した突起をもつなど、アメリカのワシントン州で発見されているオリンピディテスに近縁ではないかと考えられます。

化石の保存が悪いため、研究があまり進んでいないことも一つの要因ですが、プロトプテルム科の初期の進化の様子は未だよく分かっていません。西海市の発見で、このグループが現れたかなり早い時点で、日本では多様化が進んでいたことがより明らかとなりました。恐らく日本の多くの地域に初期のうちから多種のものが現れ、その後引き続いて九州の海辺では繁栄していたようです。

展示公開日程

西海市

西海市大瀬戸歴史民俗資料館
実物化石を展示
期間:8月19日㈬〜9月30日㈬
住所:西海市大瀬戸町瀬戸西浜郷61番地1
西海市崎戸歴史民俗資料館
実物化石を常設展示予定
期間:10月1日(木)〜
住所:西海市崎戸町蠣浦郷1224番地5

蒲郡市

蒲郡市生命の海科学館
複製を展示
期間:8月19日㈬〜9月30日㈬
住所:愛知県蒲郡市港町17-17

詳しくは各館にお問い合わせください。

標本画像

図1. 発見された化石とその特徴。(画像提供:西海市教育委員会/画像に関する問い合わせ先:森 浩嗣)

図1. 発見された化石とその特徴。(画像提供:西海市教育委員会/画像に関する問い合わせ先:森 浩嗣)

図2. 左:発見された化石の部位。右:プロトプテルム科コペプテリクス。(参考画像提供:山本 匠)

図2. 左:発見された化石の部位。右:プロトプテルム科コペプテリクス。(参考画像提供:山本 匠)

図3. 日本の主なプロプテルム科化石産地。

図3. 日本の主なプロプテルム科化石産地。


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