中国浙江省で発見されたデイノニコサウルス類の足跡化石について

2021年5月28日

福井県立恐竜博物館と浙江自然博物館との共同発掘調査(2019年6月)により発見されたデイノニコサウルス類の足跡化石が、中国四川省で見つかった足跡化石と同種であることが判明しました。また、同種の足跡化石の中では最も長く連続した歩行痕であり、これはデイノニコサウルス類の歩行様式を解明する上で重要な資料です。

論文の概要

論文名
First discovery of a deinonychosaur trackway from the lower Upper Cretaceous of southeastern China
著者
築地祐太・金幸生・杜天明・東洋一・服部創紀・中田健太郎・中山健太朗・野田芳和・鄭文傑
雑誌
Cretaceous Research
掲載日
令和3年4月28日 電子版で掲載(後日冊子体に掲載)

学術上の意義

今回の発見の意義

今回報告した足跡化石は、浙江省で2例目(1例目は卵化石)となるデイノニコサウルス類の化石で、デイノニコサウルス類の足跡化石としては中国南東部で初の発見です。これは、デイノニコサウルス類の地理的分布を知る上で貴重な資料といえます。 足跡化石は、浙江省義烏市に分布する後期白亜紀(約9000万年前)の地層から産出しました。9つの足跡化石が見つかり、その内6つの足跡が連続していました。2足歩行かつ2本指であることから、デイノニコサウルス類の足跡化石だと分かり、その特徴から中国四川省の前期白亜紀の地層から産出する「Velociraptorichnus sichuanensis(ヴェロキラプトリクヌス・シチュアネンシス)」だと判明しました。

デイノニコサウルス類には、代表的なグループとしてドロマエオサウルス科とトロオドン科が含まれます。足跡化石からドロマエオサウルス科とトロオドン科を区別できないこと、両グループの後肢は骨の長さの比率が異なっていたことから、両グループ毎の移動速度の推定を行いました。その結果、ドロマエオサウルス科だと時速6.1 km、トロオドン科だと時速4.6 kmの速さで歩いていた時に残された足跡だと推定されました。

ヴェロキラプトリクヌスの足跡化石は3つ以上連続した標本が見つかっておらず、今回報告した標本は同種で最も長く連続した保存状態の良いものでした。移動速度の推定には2歩分の歩幅の計測値が必要となるため(右―左―右など最低3つの足跡が必要)、本研究で同種の移動速度や歩様を初めて正確に推定することができました。

図1. A: 中国の地図, B: 浙江省の地図 (スケールは100
                    km), C: 足跡化石の発見場所 (スケールは10 km),D: 発見された足跡化石の鳥瞰写真.

図1. A: 中国の地図, B: 浙江省の地図 (スケールは100 km), C: 足跡化石の発見場所 (スケールは10 km),D: 発見された足跡化石の鳥瞰写真.

図2. (左)最も保存状態の良い足跡化石(L1)の写真.

図2. (左)最も保存状態の良い足跡化石(L1)の写真. (中)同足跡の3D解析図. (右)同足跡の輪郭図.スケールはいずれも5 cm. IIは人差し指, IVは薬指の位置.

図3. (左) 産出した足跡化石の連続性を示した図.

図3. (左) 産出した足跡化石の連続性を示した図. スケールは1 m. (右) 個々の足跡の拡大図. スケールは10 cm. IIは人差し指, IVは薬指の位置.

図4.
                    デイノニコサウルス類のドロマエオサウルスの生態復元模型(参考/模型製作:荒木一成)。

図4. デイノニコサウルス類のドロマエオサウルスの生態復元模型(参考/模型製作:荒木一成)。


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