手取層群北谷層から発見された新種を含むゴキブリ類化石について

2021年9月28日

恐竜博物館や九州大学、福井県立大学との共同研究からゴキブリ類の化石が少なくとも5種確認でき、そのうち3種が新種であることが判明し、論文として発表しました。このように、同じ場所からの複数種のゴキブリ類の報告は、日本の白亜紀の地層からは初めてです。特に、前期白亜紀における昆虫化石産出の場所は世界的にも限られており、そのゴキブリ類の多様性の解明は、当時の北半球におけるゴキブリ類の進化を理解する上で重要です。

論文

タイトル
New cockroach assemblage from the Lower Cretaceous Kitadani Formation, Fukui, Japan
[和訳:福井県の下部白亜系北谷層から産出した新しいゴキブリ化石群集]
著者(連名順)
大山 望(九州大学大学院理学府 特別研究員)[筆頭著者]
湯川弘一(福井県立恐竜博物館 研究員)
今井拓哉(福井県立大学恐竜学研究所 助教/福井県立恐竜博物館 研究員)
掲載雑誌
Palaeontographica Abteilung A: Palaeozoology – Stratigraphy
パレオントグラフィカ:Schweizerbart and Borntraeger Science出版発行で、古生物学(古動物学・古生態学・生層序学)のあらゆる領域を対象としたドイツの国際学術雑誌。
掲載日
2021年9月9日発行(オンライン)

ゴキブリ類化石

新種

  1. 学名
    Petropterix fukuiensis
    和名表記
    ペトロプテリクス・フクイエンシス
    特徴
    甲虫のような硬い翅を持つペトロプテリクス属の中でも、この種は翅が小さく、翅の中にある小さなくぼみ(バンキーという構造)が密集しており、複雑な模様がみられることで特徴づけられます。
    学名の意味
    種小名fukuiensisは「福井」と場所を表す形容詞にするラテン語-ensisの組み合わせで「福井の」の意味。保存状態の良さなどから、福井ならびに日本を代表するゴキブリ類化石であることに由来しています。

    ペトロプテリクス・フクイエンシス(前翅)

    ペトロプテリクス・フクイエンシス(前翅)

  2. 学名
    Praeblattella inexpecta
    和名表記
    プラエブラッテエラ・インエクスペクタ
    特徴
    プラエブラッテエラ属の他の種と比較すると、この種は翅に模様がなく、翅に筋のように走っている脈(翅脈)の枝分かれが多い事で特徴づけられます。
    学名の意味
    種小名inexpectaは「予期していない」という意味のラテン語です。2014年の発見まで、恐竜化石発掘現場からは昆虫化石は見つからないと思われていたことと、ゴキブリ類化石は手取層群において初めての発見であったことに由来します。

    プラエブラッテエラ・インエクスペクタ(前翅)

    プラエブラッテエラ・インエクスペクタ(前翅)

  3. 学名
    Praeblattella arcuata
    和名表記
    プラエブラッテエラ・アーキュアタ
    特徴
    プラエブラッテエラ属の他の種と比較すると、この種は翅に模様がなく、翅全体の幅が広く、翅脈の一部(R脈)が弓状に曲がっており、翅脈の別の部分(CuP脈)がS字状になっている事で特徴づけられます。
    学名の意味
    種小名arcuata は「弓状の」という意味のラテン語で、新種としての特徴の一つである前翅の翅脈の一部が弓状に曲がっていることに由来します。

    プラエブラッテエラ・アーキュアタ(前翅)

    プラエブラッテエラ・アーキュアタ(前翅)

属未定種

  1. 学名
    ?Vitisma sp.
    和名表記
    ビチスマ属?の一種
    特徴
    ビチスマ属は硬化した翅を持っており、その翅の中央部に斑紋とよばれる模様があること、単純な翅脈を持つことで特徴づけられます。

    ビチスマ属?の一種(前翅)

    ビチスマ属?の一種(前翅)

  2. 学名
    ?Morphna sp.
    和名表記
    モルフナ属?の一種
    特徴
    モルフナ属は翅の両端(前縁部と後縁部)が平行で、翅の付く部分(基部)が広く、その付近の翅脈の一部(SC脈)が複数回枝分かれすることで特徴づけられます。

    モルフナ属?の一種(前翅)

    モルフナ属?の一種(前翅)

産地など

産地
恐竜化石発掘現場および杉山川上流部((3)標本:恐竜化石発掘現場より上流)〈勝山市北谷町〉
時代
前期白亜紀(約1億2000万年前)
地層
手取層群北谷層

学術上の意義

  1. 日本の白亜紀の地層から複数種のゴキブリ類が報告されるのは初めてです。さらに、前期白亜紀における昆虫化石産出の場所は世界的に限られています。従って、本発見は、当時の北半球におけるゴキブリ類の進化を理解するための重要な情報になります。
  2. 北谷層のゴキブリ化石群集は、地理的に近い東アジア(中国や北朝鮮)のゴキブリ化石群集よりもむしろ、北アジア(特にモンゴルやロシア)の前期白亜紀のゴキブリ化石群集と高い一致を示していることが明らかとなりました。

福井県立恐竜博物館
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