古生代の巨大な貝化石(ツノガイ類)の新属新種と巨大化した要因に関する可能性を明らかにしました

2021年9月12日

岐阜県大垣市に分布する古生代ペルム紀中期(2億8000万年前—2億6500万年前)の石灰岩(赤坂石灰岩)から発見された巨大なツノガイ類を基に、全体像が混迷していた古生代ツノガイ類の分類を整理し、新属新種とともに古生代ツノガイ類の巨大化した要因に関する可能性を提唱する論文を発表しました。

論文

タイトル
Gigantic scaphopods (Mollusca) from the Permian Akasaka Limestone, central Japan
[和訳:中日本のペルム系赤坂石灰岩から産した巨大ツノガイ類]
著者(連名順)
安里 開士(福井県立恐竜博物館主事)
加瀬 友喜(神奈川大学理学部生物科学科特任教授)
掲載雑誌
Journal of Paleontology(ジャーナル・オブ・パレオントロジー:米国古生物学会発刊の国際学術論文誌)
掲載日
2021年7月(電子版:2021年3月10日掲載)

研究背景

ツノガイ類はサザエやアサリと同じ軟体動物の仲間で、象牙状に反り返った円筒状の殻を持ち、底生有孔虫など小動物を捕食する肉食性の貝類です。ツノガイ類の確かな化石記録は、古生代デボン紀—石炭紀(およそ4億年—3億年前)までさかのぼり、プロデンタリウム属とプラジオグリプタ属の2属が知られております。ツノガイ類はシンプルな殻形態のため断片的な標本で同定するのは困難で、殻頂部に形成される頂孔(二次的に作られる穴)の有無が重要になります。しかし時代の古い古生代のツノガイ類化石では頂孔が保存された標本はまれで、これまでに頂孔が保存された標本は4例しか報告されておらず、中にはツノガイ類かどうか疑わしいものも存在しておりました。本研究では、岐阜家の大垣市の金生山周辺に分布するペルム紀中期の赤坂石灰岩から新たに発見された標本に基づき、赤坂石灰岩産のツノガイ類の殻形態を明らかにし、既存種との比較を行いました。

図1.ツノガイ類のかたち。大きさ約5㎝。角笛のような円筒形の殻をしている

図1.ツノガイ類のかたち。大きさ約5㎝。角笛のような円筒形の殻をしている

結果と意義

分類

図2.本研究で提唱された新属新種のツノガイ類。各種とも大きさは15㎝—30㎝になる。

図2.本研究で提唱された新属新種のツノガイ類。各種とも大きさは15㎝—30㎝になる。

赤坂石灰岩産のツノガイ類は、種ごとに形態の異なる頂孔を持つことが明らかになりました。これらの特徴と殻表面の彫刻を合わせて、既知種38種と比較検討をした結果、1新属(ミノデンタリウム属)3新種(プロデンタリウム・オノイ、ミノデンタリウム・ハヤサカイ、ミノデンタリウム・オクムライ)を含む5種を識別しました。また、既知種38種それぞれについても検討した結果、これまで知られていた2属のうち、プラジオグリプタ属と呼ばれているもののほとんどは真のプラジオグリプタ属ではなく、本研究で提唱した新属ミノデンタリウム属であることが判明しました。

古生代ツノガイ類の巨大化

既存種の検討の際、古生代石炭紀後期—ペルム紀中期のツノガイ類が異常に巨大であるということが新たに判明しました。この巨大化は、ツノガイ類の餌資源が大量に存在していたことを示唆すると考えられます。ツノガイ類が底生有孔虫を捕食することから、本研究では、古生代のツノガイ類が、当時大繁栄していた大型底生有孔虫のフズリナ類の捕食に伴って巨大化したという可能性を議論・提唱しています。


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