鯨類の耳骨の構造に関する新しい発見がありました

2021年1月26日

当館研究員等の共同研究により、100年近くにわたって世界の鯨類研究者が誤って理解していた鯨類の耳骨内部について、世界で初めて正しい構造が明らかになりました。

このたび、その研究成果を報告した学術論文が米国の学術誌に掲載されましたので、お知らせします。

発表の概要

論文のタイトル
The so-called foramen singulare in cetacean periotics is actually the superior vestibular area
邦訳:「鯨類の耳周骨のいわゆる単孔は実際には上前庭野である」
執筆者(共同研究者)
一島 啓人(福井県立恐竜博物館研究・展示課長)
河部 壮一郎(福井県立恐竜博物館研究員、福井県立大学恐竜学研究所准教授)
澤村 寛(足寄動物化石博物館前館長)
掲載雑誌
Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology
掲載日
2021年1月18日㈪ 電子版で掲載(後日冊子体に掲載)

論文のポイント

CTスキャナによる解析

CTスキャナを用いてマッコウクジラの内耳神経の経路を特定し、世界で初めて鯨類の耳骨の詳細な構造を明らかにした。

導き出した新たな解釈

これまでは、「鯨類の耳骨の構造は一般的な哺乳類とは異なる」と理解されていたが、今回の研究により「鯨類の耳骨は哺乳類としての同じ基本構造を備えている」ことが世界で初めて解明された。

また、同時に、鯨類の耳骨に起こった独特の変化も明らかにし、この独特の変化が誤解を招く原因であることも突き止めた。

鯨類の基本的な耳骨の構造(マッコウクジラの耳骨の例)

鯨類の基本的な耳骨の構造

本研究成果の影響

本研究は鯨類の耳骨の各構造を同定するためのメルクマールを提示した世界初の研究であり、今後は本研究の解釈が進化の研究や分類学におけるスタンダードになると思われる。


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