熊本県天草市から発見された九州最古(約1億500万年前)の翼竜化石について

2023年7月20日

概要

1997年に天草市御所浦町において、御所浦層群烏帽子層ごしょうらそうぐんえぼしそう(前期白亜紀末:約1億500万年前)の骨化石を含む転石を、天草市立御所浦白亜紀資料館の野外調査で収集し、その後、福井県立恐竜博物館と共同研究を行った結果、九州最古の翼竜化石と判明しました。

この化石は、九州で初めての前期白亜紀の翼竜化石であり、日本の翼竜類の地理的・時代的広がりを知る重要な資料となります。

展示する化石

翼竜化石を含む岩石1点(約21×16×8 cm:GCM-VP460*)
*天草市立御所浦白亜紀資料館(GCM)の標本登録番号

図1 発見された化石(GCM-VP460)。白い枠で囲まれた黒い部分が骨化石。

図1 発見された化石(GCM-VP460)。白い枠で囲まれた黒い部分が骨化石。
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館

発見・研究の経緯

1997年、天草市立御所浦白亜紀資料館の調査において、天草市御所浦町烏帽子南方採石場(通称「白亜紀の壁」)より、烏帽子層下部と考えられる骨化石を含む転石(GCM-VP460)を採集しました。昨年より、福井県立恐竜博物館にてマイクロフォーカスCT装置を使用した共同研究により、翼竜の骨が複数点含まれていることが判明しました。

図2 化石の発見地、天草市御所浦町烏帽子南方の採石場(赤の星印:通称「白亜紀の壁」)。

図2 化石の発見地、天草市御所浦町烏帽子南方の採石場(赤の星印:通称「白亜紀の壁」)。
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館

化石の特徴

CT画像による観察では、少なくとも5つの断片的な骨が岩石の約10×10×7cmの範囲に含まれていることが分かりました(図3A)。骨は約20×12 mmの横断面をもつものや、長さ約7㎝におよぶ骨もあり、これらは同一個体のものと考えられます。全ての骨は中空で、骨の壁の厚さが1~2mmの薄い皮質骨からなり、骨の横断面は楕円形です。長い骨は翼竜の指骨(翼を支える第4指)に類似した特徴があると判明しました。なお、骨化石は汽水にすむ巻貝の化石と一緒に、岩石中に保存されていました。

図3 AとB:CT画像から立体に復元した岩石中の翼竜化石。C:骨化石のCT画像、D:巻貝のCT画像。

図3 AとB:CT画像から立体に復元した岩石中の翼竜化石(薄い皮質骨をカラーで表示。グレーは巻貝化石)。C:骨化石のCT画像、D:巻貝のCT画像。B、C、Dの位置はAを参照。
画像提供:天草市立御所浦白亜紀資料館・福井県立恐竜博物館

学術的意義

過去、国内では12か所から翼竜化石が発見されています(図4)。国内最古級の化石は、北陸(富山、石川、福井)と岐阜から知られる前期白亜紀の歯や足跡化石などです。後期白亜紀からは部分的な骨の化石が北海道から九州まで知られており、九州においては熊本(御船町)、長崎(長崎市)、鹿児島(長島町)から骨の化石の記録があります。今回の化石は、前期白亜紀の後期(アルビアン)から発見された化石であり、九州では最古のものとなります。前期白亜紀から後期白亜紀に移るころ、翼竜が国内に分布を広げていったことを示す新たな記録であるとわかりました。

図4 日本の翼竜化石産出地。

図4 日本の翼竜化石産出地。緑色は白亜紀後期のもの、青い色が白亜紀前期のもの、赤い星が今回の化石発見地。

論文情報

表題
熊本県天草市御所浦島の白亜系御所浦層群から産した翼竜類化石
著者
黒須弘美, 廣瀬浩司, 宮田和周
雑誌
天草市立御所浦白亜紀資料館報, 第24号,21-25ページ,2023年 3月31日

一般公開

展示公開予定

天草市御所浦白亜紀資料館(移転事務所)
令和5年7月21日(金)~8月31日(木)の期間、天草市立御所浦白亜紀資料館の移転事務所にて、実物化石を展示。
資料館は「天草市立御所浦恐竜の島博物館」としてリニューアル建設中(令和6年3月オープン予定)。

福井県立恐竜博物館
所在地:
〒911-8601 
福井県勝山市村岡町寺尾51-11
かつやま恐竜の森内
TEL:0779-88-0001(代表)
TEL:0779-88-0892(団体受付)

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