勝山市北谷層で発見されたイグアノドン類幼体の足跡化石について
2024年2月7日
福井県立恐竜博物館は、福井県勝山市に分布する前期白亜紀の北谷層で継続的に発掘調査を行なっています。この度、第四次調査で発見されていた足跡化石の中に、イグアノドン類の幼体によって残されたものがあることがわかりましたのでお知らせします。
化石について
- (1) 同一ステップの右前足と右後足によって残された足印の凹型と凸型
*足印:足跡化石の中でも、前足または後足によって残された単一の跡のこと凹型
凸型
左:凹型足印の3D解析図,右:同足印の輪郭図
- 特徴
前足は丸い輪郭をしており、長さと幅はほぼ同じで2.3cmほどです。後足の前方やや外側に残されています。後足の足印長は9.3cm、足印幅は9.8cmです。足趾の痕跡は3本とも全体的に丸みを帯びており、パッド痕がそれぞれの足趾に一つずつ残されています。また足底部のパッド痕も認められ、それぞれの足趾の近位端と接しています。これらの特徴は、この足印を残した動物が鳥脚類のイグアノドン類であることを示しています。 - 産地
北谷恐竜化石発掘現場(福井県勝山市北谷町) - 地層
手取層群北谷層 - 時代
前期白亜紀(約1億2000万年前)
発見の意義
- 北谷層から産出するイグアノドン類の足印の多くは20〜30cmほどの大きさですが、この足印はそれらに比べて極端に小型です。また、この足印を残した個体の推定体サイズが、北谷層から産出するイグアノドン類(フクイサウルスやコシサウルス)よりも明らかに小型です。以上のことから、この足印は幼体によって残されたと考えられます。
- この足印と同等サイズの小型イグアノドン類の足印は世界的にみても数例しかありません。最小の記録は、中国四川省の前期白亜紀の地層から見つかった二足歩行性の足印で、その足印長は8.4cmです。四足歩行性の足印では、アラスカの後期白亜紀の地層から見つかったものが最小で、足印長が11cmです。そのため、北谷層の標本は四足歩行性のイグアノドン類の足印としては世界最小級です。
- 従来、イグアノドン類は成体になるにつれ、二足歩行から四足歩行に移行すると考えられていました。今回発見された足印は、北谷層のイグアノドン類には体の小さい幼体の頃から四足歩行をする種類がいたことを示しています。そのため、この標本はイグアノドン類の成長過程や歩行様式を推定する上で重要だと考えられます。
その他
- 展示について
現在展示中
期間:2024年4月9日㈫まで(予定)
場所:恐竜博物館 新館ホール3階 - 学会発表
1月28日㈰に東北大学で開催された日本古生物学会第173回例会において発表しました。
題目: 下部白亜系手取層群北谷層から産出した新たな鳥脚類足印
講演者:築地祐太・柴田正輝・河部壮一郎・今井拓哉・東洋一