福井県勝山市から発見されたゴニオフォリス科(ワニ形類)化石について
2024年3月14日
福井県立恐竜博物館は、福井県勝山市に分布する下部白亜系北谷層で継続的に発掘調査を行なっています。この度、第三次〜四次調査で発見されていたワニ形類化石を、連携博物館である徳島県立博物館との共同調査の結果、恐竜時代に生息したゴニオフォリス科であることがわかりました。その成果が、2024年2月27日に国際学術雑誌「Annales de Paléontologie」の特別号に掲載されました。
化石について
- 研究標本(総計21点:2008年1点、2009年3点、2010年8点、2016年3点、2017年3点、2018年2点)
前上顎骨1点、上顎骨2点、頭頂骨1点、方形骨1点、歯骨1点、遊離歯4点、胴椎3点、尾椎2点、大腿骨2点、鱗板4点頭骨を上から見た図/下顎を下から見た図
- 分類
ワニ形上目正顎類ゴニオフォリス科- ※ゴニオフォリス科とは
- ゴニオフォリス科とは、中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて、アジアやヨーロッパ、北アメリカに生息していたワニ形類のグループです。姿かたちは現在生きているワニ類に非常に近いですが、頭骨や背骨、鱗板などの特徴は今のワニ類とは異なり、まだ水生適応の程度が低かったと考えられています。本邦では福井県勝山市からのみ発見されています。
ゴニオフォリス科ワニ形類の生体復元画(提供:徳島県立博物館、画:山本匠)
- 産地
北谷恐竜化石発掘現場(福井県勝山市北谷町)北谷恐竜化石発掘現場
- 地層
手取層群北谷層 - 時代
前期白亜紀(約1億2000万年前)
発見の意義
- 北谷層のワニ形類化石は、以前からゴニオフォリス科として知られていましたが、正式に学術雑誌に掲載されたのは初めてです(令和4年7月にゴニオフォリス科の上顎骨化石について記者発表を行っているが、学会発表のみ)。
- 系統分析の結果、北谷層のワニ形類化石は原始的なゴニオフォリス科ワニ形類であることが明らかになりましたが、同時に、一部の進化的な形質を併せ持つユニークな特徴が見られることが判明しました。
- 本標本の原始的かつ進化的形質を併せ持つという特徴は、タイの下部白亜系から発見されたシアモスクス(Siamosuchus phuphokensis)と共有しており、アジアにおけるゴニオフォリス科の進化が他の地域と異なっていた可能性を示す重要な証拠の一つとなります。
発表論文
- 題目
New goniopholidid specimens from the Lower Cretaceous Kitadani Formation, Tetori Group, Japan
邦題:日本の下部白亜系手取層群北谷層から産出した新たなゴニオフォリス科標本 - 著者
小布施彰太(徳島県立博物館)・柴田正輝(福井県立大学恐竜学研究所/福井県立恐竜博物館) - 雑誌
「Annales de Paléontologie」特別号
エルゼビア社によって出版されている、古生物学のあらゆる分野を取り扱っているフランスの学術雑誌で、今回掲載されるのは東南アジアの古生物に関しての特別号です。
その他
- 展示について
期間:2024年3月14日㈭〜4月9日㈫まで(予定)
場所:恐竜博物館 新館ホール3階 - 徳島県立博物館との連携について
徳島県立博物館とは2006年以来、連携博物館の関係を結び、研究や教育普及、展示などで協力しています。近年では、徳島県立博物館が行っている恐竜化石調査に協力し、恐竜化石の発見にも貢献しています。