タイで発見されたオルニトミモサウルス類の四肢骨
~タイ共同発掘における成果~

2025年2月28日

福井県立恐竜博物館及び福井県立大学恐竜学研究所とナコーン・ラチャシーマ・ラジャバット大学付属珪化木鉱物資源東北調査研究所(通称:コラート化石博物館)は、タイ王国における共同発掘調査でオルニトミモサウルス類の四肢骨を発見し、その成果を報告した学術論文が当館紀要に掲載されました。

発見された化石

  1. 分類
    獣脚類 コエルロサウルス類 オルニトミモサウルス類
  2. 部位
    右第Ⅲ中足骨(図1)
  3. 大きさ
    84.37mm × 14.86mm

経緯

福井県立恐竜博物館は、2007年からコラート化石博物館と継続的に共同発掘調査を行ってきました。その主な成果として、これまでに3種の新種恐竜が発見されており、2011年にはイグアノドン類ラチャシマサウルス(Ratchasimasaurus suranareae)、2015年には同じくイグアノドン類シリントーナ(Sirindhorna khoratensis)、2019年にはカルカロドントサウルス類シャムラプトル(Siamraptor suwati)が報告されてきました。

こうした共同調査で発見された化石は、両館でクリーニング作業が進められてきましたが、その中に上記の恐竜とは異なる四肢骨の一部が確認され、共同研究が進められてきました。

化石の特徴

棒状の構造や、隣接する骨との関節面の形状などから、獣脚類の第Ⅲ中足骨であることがわかります。化石は上半分を欠いていますが、上部に向けて細まっていく様子が確認できます。これはコエルロサウルス類の複数のグループで見られる特徴ですが、断面がほぼ三角形状で、前面が左右にあまり広がらないことなどから、オルニトミモサウルス類のものであると断定できます。

オルニトミモサウルス類とは

獣脚類コエルロサウルス類に分類される羽毛恐竜の一群です。一般的に、小さな頭、長い首、細長い後肢など、ダチョウによく似た体型をしており、速く走ることが得意な恐竜として知られています。アジアやアメリカなどを中心に、後期ジュラ紀〜後期白亜紀(約1億5000万〜6600万年前)の地層から、数多くの化石が発見されています。福井県勝山市の手取層群北谷層(約1億2000万年前)で発見されたティラノミムス(Tyrannomimus fukuiensis)も、この一群に含まれます。

学術的意義

オルニトミモサウルス類の骨化石が、タイ共同発掘で調査対象としている地層のコク・クルアト層で発見されたのは、今回が初めてです。タイの他の地層(サオ・クア層:約1億3000万年前)でもこの仲間の化石が見つかっていますが、今回の化石はそれとは異なる特徴を示しており、異なる種であると考えられます。

今回の発見は、前期白亜紀のタイにおいて、アジアの他地域と同様にこの仲間が多様性に富んでいたことを示しています。また、福井県をはじめとする他地域でも、カルカロドントサウルス類やイグアノドン類に加えてオルニトミモサウルス類が発見されていることから、当時の生態系の広がりや、進化の過程でそれぞれがどのような影響を与え合っていたのかを解明する手がかりとなります。

発表論文

タイトル
A new ornithomimosaurian material from the Khok Kruat Formation, Lower Cretaceous of Thailand
(タイ王国下部白亜系コク・クルアト層から発見された新たなオルニトミモサウルス類化石)
執筆者(連名順)
Duangsuda Chokchaloemwong(ナコーンラチャシーマ・ラジャバット大学/コラート化石博物館)
服部創紀(福井県立大学恐竜学研究所/福井県立恐竜博物館)
湯川弘一(福井県立恐竜博物館)
柴田正輝(福井県立大学恐竜学研究所/福井県立恐竜博物館)
Wilailuck Naksri(コラート化石博物館)
掲載雑誌
福井県立恐竜博物館紀要第23号

参考画像等

図 1. 発見された化石

図 1. 発見された化石

図 2. 恐竜化石発掘現場

図 2. 恐竜化石発掘現場


福井県立恐竜博物館
所在地:
〒911-8601 
福井県勝山市村岡町寺尾51-11
かつやま恐竜の森内
TEL:0779-88-0001(代表)
TEL:0779-88-0892(団体受付)

©2000 - Fukui Prefectural Dinosaur Museum.