長崎市の新たな鎧竜化石について
概要
福井県立恐竜博物館と長崎市恐竜博物館(長崎市教育委員会恐竜研究所)の共同発掘調査により、長崎半島西海岸の三ツ瀬層(後期白亜紀:約8000万年前)から新たに鎧竜の歯の化石2点が発見されました。2014年発表の鎧竜の歯の化石に、新たな2点の追加標本が加わり、それらを研究した結果、日本の鎧竜の分布と多様性に関する新たな知見が得られました。
化石について(長崎市恐竜博物館所蔵)
1)左上顎歯(図1左)
- 標本番号
- NCDM-BENC100525
- 大きさ
- 長さ7.5 mm、幅8.9 mm
2)左下顎歯(図1右)
- 標本番号
- NCDM-BENC100738
- 大きさ
- 長さ9.2 mm、幅10.8 mm

図1 新たに発見された長崎市産出の鎧竜類歯化石
左上顎歯:NCDM-BENC100525(図左)と左下顎歯:NCDM-BENC100738(図右)。
画像提供:長崎市恐竜博物館・福井県立恐竜博物館
化石の発見と研究の経緯について
福井県立恐竜博物館と長崎市の共同発掘調査において、長崎半島西海岸の三ツ瀬層から発見されました。新たな歯の化石2点は、2016年に収集した岩石の中にあり、当時担当した福井県立恐竜博物館での化石クリーニング作業中(2017年と2018年)に判明しました。
長崎市恐竜博物館恐竜研究所は、開館(2021年)当初から福井県立恐竜博物館と共にこれら鎧竜の歯の研究を進めてきました。
学術的意義
鎧竜は、頭から尾にかけて骨のよろいをもつ植物食恐竜で、ジュラ紀から白亜紀末にかけて繁栄していました(図2)。
長崎市から発見された標本には、歯の縁に細かい突起や、歯に帯状のふくらみがあるなど、鎧竜特有の特徴があります。研究の結果、それらの歯の縁にある突起の数や、歯がかみ合うことで擦り減る摩耗面などに、それぞれ異なる特徴があると分かってきました。鎧竜は咀嚼運動が進化とともに変化してきたことが先行研究で知られており、歯の形態の違いとなって現れます。これまでの研究で、後期白亜紀の長崎半島では、同時期に複数種の鎧竜類がいた可能性が分かってきました。その研究成果の一部は、本年6月28日の日本古生物学会でも報告しています。
日本国内では、北海道(頭骨の一部)、福井県(歯・足跡)、富山県(足跡)、兵庫県(歯)、熊本県(歯)の5箇所から鎧竜化石が発見されていますが(図3)、いずれも同時期に異なる種類の鎧竜がいたとする報告はありません。同時期の地層から、複数の異なる種類の鎧竜化石が見つかることは、国外の例においても稀であり、長崎市の化石はその可能性を国内で初めて示すものとなります。
また長崎市の化石は約8000万年前と詳しい年代が分かっています。このように年代の分かる化石であり、後期白亜紀の鎧竜の多様化と分布を知るうえで重要な資料となります。

図2 後期白亜紀の鎧竜
画像提供:長崎市恐竜博物館・福井県立恐竜博物館(作画:月本佳代美)

図3 日本国内の鎧竜類化石の産出地
画像提供:長崎市恐竜博物館・福井県立恐竜博物館

図4 長崎市の鎧竜の歯の化石
画像の左(左上顎歯:NDCM-BENC100143)は2014年発表の長崎初の鎧竜の歯。画像中央(左上顎歯:NCDM-BENC100525)と画像の右(左下顎歯:NCDM-BENC100738)が新たな化石。
画像提供:長崎市恐竜博物館・福井県立恐竜博物館
参考)2014年発表の長崎初の鎧竜の化石(図4左)
・左上顎歯/NDCM-BENC100143/大きさ:長さ6.3 mm、幅9.8 mm
・参考URL
https://www.city.nagasaki.lg.jp/uploaded/attachment/22336.pdf
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/research/201407ankylo/
化石の展示について
下記のとおり、化石の実物と複製が展示されます。
- 実物
- 2025年10月25日(土)から長崎市恐竜博物館で常設展示
- 複製
- 2025年10月25日(土)から福井県立恐竜博物館で常設展示

