タイ王国の大型肉食恐竜シャムラプトルの脳函形態の解明と展示について

2026年5月14日

福井県立恐竜博物館と福井県立大学恐竜学部、およびタイ王国のコラート化石博物館は、タイ王国で発見された約1億2000万年前の大型肉食恐竜の頭骨の一部を研究し、それがシャムラプトル・スワッティの脳函(脳をとり囲む骨)であることを突き止め、その解剖学的特徴を明らかにしました。この研究成果は、米国のオンライン科学雑誌「PLOS One」にて4月末に発表されました。

発表の概要

雑誌名
PLOS One:https://journals.plos.org/plosone/
論文名
Braincase of Siamraptor suwati and insights into the cranial anatomy of Carcharodontosauria
(シャムラプトル・スワッティの脳函とカルカロドントサウルス類の頭蓋解剖学に関する知見)
著者
服部創紀(福井県立大学恐竜学部/福井県立恐竜博物館)
ドゥアングスダ・チョクチャロムウォング(ナコーンラチャシーマ・ラジャバット大学/コラート化石博物館)
河部壮一郎(福井県立大学恐竜学部/福井県立恐竜博物館)
エレナ・クエスタ(バイエルン州古生物学・地質学コレクション)
柴田正輝(福井県立大学恐竜学部/福井県立恐竜博物館)
宮田和周(福井県立恐竜博物館/福井県立大学)
東 洋一(福井県立大学/福井県立恐竜博物館)
掲載日
2026年4月29日 オンライン公開

化石について

学名
Siamraptor suwati(和表記:シャムラプトル・スワッティ)
分類
獣脚類 アロサウルス上科 カルカロドントサウルス類
年代
約1億2000万年前(前期白亜紀中頃)
発見場所
タイ王国 ナコーン・ラチャシーマ県 ムアング区 スラナリ地区 サファン・ヒン村 恐竜化石発掘現場(図1)
発見時期
2003〜2013年(脳函化石の発見は2003〜2005年および2007年)
推定サイズ
全長約 8m

研究の経緯

福井県立恐竜博物館は、2007年からコラート化石博物館との共同発掘調査を開始し、現在は県立大学恐竜学部も参画する共同研究調査を継続しています。この共同調査以前から、タイ王国では約1億2000万年前の恐竜化石が知られ、正体のよく分からない脳函化石(NRRU-F01020035)も見つかっていました。その化石の産地や発見時期はやや不明確であり、比較できる化石も見つかっていなかったことから分類は未確定のままでした。

しかし、2019年に新属新種と報告された大型肉食恐竜のシャムラプトルの発掘地から、とてもよく似た特徴を持つ脳函の断片(NRRU-F01020036:2007年発見)があることが近年明らかになり、共同調査チームが化石の解析を進めたところ、これら脳函は同一種のカルカロドントサウルス類であり、シャムラプトル・スワッティのものだと判明しました。この地域で見つかっているカルカロドントサウルス類の化石は、すべてシャムラプトルのものだと考えられています。

発見された脳函の形態を詳細に調べて公表することで、シャムラプトルとその近縁種の系統関係が明確となり、さらにカルカロドントサウルス類の重要な比較資料として、より一層学術的な重要度が高まったといえます。

※脳函:頭骨のうち脳を囲う部分であり、恐竜では頭頂部や後頭部を構成する骨のこと

学術上の意義

カルカロドントサウルス類は汎世界的に分布した大型肉食恐竜のグループで、その中でも原始的なシャムラプトルは、このグループの進化の初期段階を知る重要な恐竜です。

本研究はこれまで未発見だったシャムラプトルの重要な頭部の情報を明らかにしました。その脳函には、かつてカルカロドントサウルス類の一部でのみ知られていた特徴が複数あり、脳函を含む系統解析からそれらはカルカロドントサウルス類のグループ全体に共通したものであることが分かってきました。その特徴の中には、頭部の温度調節や、首の筋肉の働きと関係すると思われるものもあり、大型肉食恐竜の頭の進化を考察する重要な手がかりとなります。

今後の発掘調査で、シャムラプトルの全体像はさらに明らかとなり、カルカロドントサウルス類の進化史の解明が一層進むと期待されます。

展示について

脳函化石2点を、下記のとおり展示します。

展示期間
2026年5月14日(木)〜同年9月8日(火)
展示場所
恐竜博物館2階 化石クリーニング室上部の横

参考画像等

図1. サファン・ヒン村の恐竜化石発掘現場

図1. サファン・ヒン村の恐竜化石発掘現場

図2. 最初の脳函化石(NRRU-F01020035:2003〜2005年発見)

図2. 最初の脳函化石(NRRU-F01020035:2003〜2005年発見)

図3. 脳函化石NRRU-F01020036(2007年発見)

図3. 脳函化石NRRU-F01020036(2007年発見)
NRRU-F01020035を参考に対応位置を示す

図4. NRRU-F01020035の内腔の型(エンドキャスト)

図4. NRRU-F01020035の内腔の型(エンドキャスト)
NRRU-F01020035を透過し、エンドキャストを色付けしたもの
ピンクは脳、黄色は神経、紫は内耳、青は血管、水色は気嚢を示す

図5. シャムラプトルの頭骨における脳函の位置

図5. シャムラプトルの頭骨における脳函の位置

図6. 脳函を含むシャムラプトルの化石とそのシルエット

図6. 脳函を含むシャムラプトルの化石とそのシルエット

図7. シャムラプトルを含むアロサウルス上科の系統関係

図7. シャムラプトルを含むアロサウルス上科の系統関係
シャムラプトルはカルカロドントサウルス類のなかで最も原始的


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