2007年度 第三次恐竜化石調査産出化石報告

2008年3月12日

2007年7月14日から8月31日までにわたり実施した2007年度第三次恐竜化石発掘調査において発見された化石について、クリーニング作業により明らかになった内容を報告いたします。

参考:第三次恐竜化石発掘調査2007年度報告について(博物館ニュース)

2007年度 第三次恐竜化石調査成果の概要

2007年から開始した第三次恐竜化石の発掘調査では新たに約1200点の脊椎動物の化石を発見した。

その中で、同一個体の獣脚類のものと考えられる多数の骨化石を含む岩石を確認した。この岩石からは後足と腰の骨が発見され、さらに他の部位も多数保存されている。

獣脚類について、このように各部位の骨化石がつながっている状態に近い産状での発見は我が国初である。

また、竜脚類の上腕骨や大腿骨などさまざまな部位の貴重な骨化石を発見したが、その後のクリーニング作業により腸骨などの新たな部位の骨化石を確認した。さらに「胃石」の存在を確認したが、この発見例は我が国で最初の事例である。

調査期間
2007年7月14日から8月31日まで(49日間)
調査地
勝山市北谷町杉山 恐竜化石発掘現場
地層
手取層群北谷層(白亜紀前期、約1億2000万年前)
調査面積
約200㎡
参加人数
延べ 約600名
(福井県立恐竜博物館職員、県内外恐竜化石研究者、地質学系大学生・大学院生)
化石点数
脊椎動物化石 約1200点

小型獣脚類化石について

小型獣脚類の化石は、第三次恐竜化石調査期間中の2007年8月21日(火)に、竜脚類化石を発見した地層から約1.5m上部の細粒砂岩層から産出した。また、これらの化石は約50cm×40cmと約50cm×55cmの一対の岩石に含まれている。

現場では末節骨(指先の骨)と数本の趾骨(足の指の骨)が確認されたが、クリーニング作業により、新たな趾骨や仙椎などを確認した。これらは末節骨や趾骨の形態から獣脚類であることを確認した。

部位(長さcm×幅cm)

末節骨
3.5×0.6
趾 骨
(5個)1.6~3×0.8~1.3
中足骨
(4個)2.8×0.7、9.9×1.8、11×1.7、12×1.7
仙 椎
(4個+1個)9.8×2.6(4個が癒合)、4×3(1個)
その他
部位不明(16個以上)

意義

獣脚類の骨化石は、北海道や熊本など全国各地で発見されている。しかし、今までの発見状況例は全てが発掘地で散点的に産出されており、復元ができる状態で産出したのは福井県で発見されたフクイラプトルだけである。

今回発見された標本は、足の指の骨や脊椎骨、その他の骨が約50cm×50cmの範囲内に入っており、その産状と骨化石の大きさから同一個体のものと考えられる。獣脚類のこのような密集し、また、各部位がつながった形の産出状態は我が国で初めてであり、非常に貴重な発見である。

現時点では未だ種類の特定には至らないが、化石の大きさから考えるとフクイラプトルの幼体、あるいは異なる種類の小型獣脚類であると判断される。保存状態が非常に良く、さらに採取した周囲の岩石にも多くの骨化石が含まれていることから、今後は手や尻尾などの他の部位の発見が期待される。

図1

図1

図2

図2

竜脚類化石について

部位(下線は初公表、大きさは「長さcm×幅cm」)

上腕骨
87×25
尺骨
(左右2個)56×16、51×11
大腿骨
86×25
腸骨(推定)
44×20
恥骨(推定)
35×15
坐骨(推定)
35×8
肋骨
20×10
部位不明
18×8
6点

胃石(図5写真9)

恐竜が自ら胃の中に蓄えた石のことで、胃の中で硬い食物をすりつぶすなど消化を助けるものである。そのため石は良く円磨されているという特徴を持っている。この胃石の発見は我が国初の発見であり、世界的にも稀な例と言える。

個数
2個(産状のまま保存されている)
大きさ
14×8.5、10.5×7.5 (単位cm)

意義

竜脚類の骨化石について、今回新たに4つの部位が確認された。左右の尺骨や腸骨は日本で初めての報告であり貴重な発見である。前後の足の骨が確認されたことで、来年度に実施する発掘調査での追加標本が期待される。

胃石は国内初の発見であり、竜脚類の生態を知る上では重要である。胃石と思われる発見は多いが、今回のように骨化石と共に産出されたこと。さらに、他の堆積物とは大きさが明らかに異なるなど、胃石だと断定できる例は少ない。

図3

図3

図4

図4

図5

図5


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