長崎県産の翼竜化石について
福井県立恐竜博物館は、長崎市内の長崎半島西海岸に分布する白亜紀後期の三ツ瀬層 (約8400万年前)から、まとまった翼竜化石を発見しました。この実物化石と複製を、以下の予定で長崎市と恐竜博物館にて一般公開します。
恐竜博物館での展示公開予定
- 2012年4月26日㈭午後~7月1日㈰: 複製を展示
- 2012年7月6日㈮~10月8日㈷㈪: 実物化石を特別展にて展示
*2012年度恐竜博物館特別展/翼竜の謎―恐竜が見あげた「竜」 - 2012年10月13日㈯~: 複製を常設展示
発見された翼竜化石について
化石は下顎の一部、頸椎 の一部、不完全な大腿骨 、尺骨 、第四中手骨 、第四指を構成する複数の指骨、遠位の肋骨など、同一個体に由来する約15点の標本からなり、骨の形態的特徴から翼竜類のアズダルコ科に属すると考えられます(参考資料1)。国内では最も多くの部位がそろった翼竜化石です。
国内における翼竜化石は、北海道(約8点)、岩手県(1点)、茨城県(1点)、富山県(足跡化石:1件)、岐阜県(4点)、石川県(約9点)、福井県(足跡化石:1件)、兵庫県(2点)、熊本県(3点)と、計約30点報告されていました(参考資料2)。足跡化石を除くこれらの約半数は歯の化石(約14点)であり、他はどれもが一つの骨の一部です。過去に報告された国内の翼竜化石は1点ずつの遊離した資料であって、同一個体の複数の部位からなる翼竜化石の記録は今回が初めてとなります。なお、全身の様子を知るにはさらなる追加資料を待たなければなりませんが、保存されている化石部位からは翼開長3~4m程の翼竜と考えられ、アズダルコ科としては北海道(三笠市/肢骨 1972年と頸骨 1996年報告/共に1997年再鑑定)、熊本(頸椎 1997年発見)、兵庫県(頸椎 2004年発見)に続く5つ目の記録となります。化石は2009年10月に福井県立恐竜博物館の東洋一 特別館長と宮田和周 主任研究員が発掘し、館で化石クリーニングを経た後、翼竜化石の専門家である中国地質科学院地質研究所の 呂 君昌 博士を交えて鑑定を行いました。
長崎市からは、ハドロサウルス科の恐竜化石も発見されており(2010年7月・2012年3月公表)、白亜紀後期の長崎半島一帯は陸生脊椎動物が生息する地域が広がっていたと考えられています。今回の発見はこれを裏付けるものであり、またアズダルコ科の翼竜が白亜紀後期の日本列島に広く分布していたことをも示しています。
翼竜化石の標本写真・発見部位・復元図
参考資料1:長崎産翼竜化石
参考資料2:日本の翼竜化石産出地