日本初のプロアドクス属カメ化石について

2025年1月15日

2021年8月に福井県勝山市の恐竜化石発掘現場で行われていた第四次恐竜化石発掘調査において発見されたカメ類化石が、国内初(世界で2例目)となるプロアドクス属(カメ目・アドクス科)であることが明らかになりました。

発見された化石

プロアドクス属(カメ目・アドクス科)の甲羅化石
大きさ:約18×19×3cm
推定甲長:約27cm

経緯

この化石は2021年8月に、勝山市北谷町の恐竜化石発掘現場(手取層群北谷層:約1億2千万年前)から、甲羅の後半部がつながった状態で発見されました。福井県の発掘現場では多数のカメ化石が見つかりますが、その多くはバラバラになった状態であり、今回のようにまとまった状態での発見は珍しく、当時のカメの全貌を解明するためにとても重要な資料となります。この甲羅化石を詳細に検討した結果、アドクス科のプロアドクス属であることが判明しました。

化石の特徴

プロアドクス属の化石は非常に珍しく、これまで韓国の同時代(前期白亜紀)の地層から1点発見されているのみで、今回の発見は日本初(世界で2例目)となります。甲羅に残された凹凸模様のパターンから、今回の化石は、韓国産プロアドクス標本よりもやや派生的と考えられる特徴が見られます。より派生的なアドクス属へと進化する過程で、どのように甲羅の形態が変化したのかを解明する上で非常に重要な標本です。

※アドクス科
中生代前期白亜紀から新生代始新世にかけてアジアと北アメリカ大陸に生息していた半水生のカメ類です。主に後期白亜紀のアジアと北アメリカで繁栄しました。日本では、北海道、岩手県、石川県、福井県、徳島県、福岡県、長崎県、熊本県など全国各地の白亜紀の地層からアドクス科の化石が発見されています。原始的なスッポンの系統(汎スッポン類)で、スッポン科と比較的近縁なグループですが、その姿や生態はむしろイシガメやヌマガメに似た一般的な半水生カメ類に近いものでした。

学術的意義

  1. アドクス科は、福井県の恐竜化石発掘現場から最もよく見つかるカメ類で、これまでアドクス属(アドクス科を代表する派生的なカメ)の存在は知られていましたが、今回の発見により同じアドクス科において2属以上のカメ類が共存していたことが明らかとなりました。
  2. プロアドクス属はアドクス属よりやや原始的なカメ類とされていますが、今回の化石には韓国のプロアドクス標本よりも派生的(進化的)と考えられる特徴が見られることから、初期のアドクス科カメ類に起こった形態進化を解明する上で重要な資料となります。

参考画像等

プロアドクス属の化石(左:背甲/右:腹甲)

プロアドクス属の化石
(左:背甲/右:腹甲)

甲羅(左:背甲/右:腹甲)の発見部位(着色部分)

甲羅(左:背甲/右:腹甲)の発見部位(着色部分)


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