勝山市北谷層で発見されたデイノニコサウルス類足跡化石について

2025年11月7日

勝山市の北谷層における恐竜化石発掘調査で産出した足跡化石の中に、国内初となるデイノニコサウルス類の足跡化石が含まれていることが判明しています。(2023年2月発表済)

この度、この足跡化石のさらなる調査研究の結果、足跡化石分類群の中でもベロキラプトリクヌスの一種に同定されました。

その研究成果が、2025年10月29日に国際学術雑誌「Cretaceous Reserch」に掲載されましたのでお知らせします。

化石について

分類
デイノニコサウリプス科 ベロキラプトリクヌスの1種
時代
前期白亜紀(約1億2千万年前)
地層
手取層群北谷層
発見
1991年(第1次恐竜化石発掘調査)
展示
恐竜博物館2階 ダイノライブラリーで展示公開中

論文発表について

雑誌名
Cretaceous Reserch(クリテイシャス リサーチ)
(白亜紀に関する地質学・古生物学を扱う国際学術雑誌)
論文名
First didactyl theropod track from the Lower Cretaceous Kitadani Formation, Tetori Group< Fukui, Japan
(日本・福井県の下部白亜系手取層群北谷層から初めて産出した二趾性獣脚類の足印)
著者
築地祐太、服部創紀、東 洋一
掲載日
2025年10月29日(水) (オンライン)

特徴と意義

二趾性獣脚類の足跡化石は、一般的にデイノニコサウルス類のものとされています。足跡を含む生痕化石の分類は、生物種の分類と分けて行う必要があります。そのため、デイノニコサウルス類の足跡化石の大半は生痕化石科のデイノニコサウリプス科に分類されています。この科は6属の生痕化石属を含んでいますが、北谷層から産出したデイノニコサウルス類の足跡化石は、足跡の大きさや指の開く角度などの特徴から、中国の四川省や浙江省から産出するベロキラプトリクヌス属に同定されました。

北谷層のベロキラプトリクヌスには第Ⅲ趾(中指)の長軸上に、中足骨の趾球痕が残されています。このような特徴を持つ獣脚類の足跡化石は、アークトメタターサルという特異な中足骨の形態を持つ獣脚類と関係があると指摘されています。デイノニコサウルス類では、トロオドン科のみがアークトメタターサルを有するため、北谷層のベロキラプトリクヌスはトロオドン科が残した足跡である可能性が高いと考えられます。北谷層からはトロオドン科をはじめ、確実なデイノニコサウルス類の骨や歯の化石は見つかっていないため、今後の発掘調査でこれらの化石の発見が期待されます。

参考画像等

図1 北谷層から産出したベロキラプトリクヌスの一種

図1 北谷層から産出したベロキラプトリクヌスの一種
左:標本の写真  中:四角部分の3D解析図
右:足跡の輪郭描画(Ⅲ:中指、Ⅳ:薬指、M:中足骨の趾球痕)

図2 ドロマエオサウルス科デイノニクス(左)とトロオドン科ステノニコサウルス(右)の足部骨格

図2 ドロマエオサウルス科デイノニクス(左)とトロオドン科ステノニコサウルス(右)の足部骨格
トロオドン科の第Ⅲ中足骨は正面から見えないアークトメタターサルという形態をしている。

図3 前期白亜紀のトロオドン科シノベナートルの生体復元模型(参考/模型制作:荒木一成)

図3 前期白亜紀のトロオドン科シノベナートルの生体復元模型
(参考/模型制作:荒木一成)


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