発掘の準備作業

7月27日の発掘
7月27日の発掘

7月第四週の北谷は、雨雲が時折行き交う、天気の安定しない日々が続いていました。大雨になることもありますが、日差しのきつい日にくらべて化石を探すことにずっと集中できますから、この天気もそれほど悪いものではありません。とはいえ、このレポートを書いている7月末はかなりの大雨。降りすぎです。

現場は北谷層の幾層にも重なる砂岩・泥岩層を少しずつ掘りながら、岩石表面に化石が出ていないか丹念に見てゆきます。しかし、この時点では、我々はハンマーで石を何度もたたき割り、中の化石を探すことに専念しません。まずはどの層位(地層の上下の位置のこと)のどの岩石に、化石を探す時間を注げば良いのかを知り、有望な層位の岩石を確保するのが先決です。過去の発掘で、「定番」として知られる骨化石の集中する層(ボーンベットとも呼んでいます)がどこにあるかは分かっていて、そこを目指して上から掘削しています。現在掘っている層位は、ボーンベットのまだまだ上の位置にありますが、思いもかけず有望な骨の化石層が他にもあることが分かってきました。沢山ではないのですが、見逃せない化石も見つかっています。

地層から突き出した骨の化石
地層から突き出した骨の化石
岩石表面の化石を探す
岩石表面の化石を探す

画像に紹介する化石は、表面が黒い太い骨の化石で、地層断面から突き出していました。こんな様子で骨の化石が地層から顔を出すのはちょっと珍しいです。なぜなら通常、化石の方が周りの岩石よりも脆いので、骨の化石は岩の表面から突き出すのではなく、「断面」として見られることがほとんどだからです。ここの産出層は比較的柔らかい泥岩層で、多数の割れ目に沿って茶色の風化物(おそらく酸化鉄)が付着していますが、中は黒灰色です。保存の良い二枚貝や巻貝、硬鱗魚(鱗がほとんど)、スッポンのなかまなど、静穏な水域に棲む動物化石が多数見つかります。そういった水域に、恐竜の骨が流れ込んできているのでしょう。柔らかい層のため、このレポートが報告されるころにはすっかり掘削してしまい、学生さんたちが丹念に石を割って中の化石を探す「ハンマー隊」へと提供されていることでしょう。そして次の、さらに下の層位に骨の化石が出ないか探索し、化石の出る岩石を確保してゆくのです。化石はどこから出てもおかしくありませんが、層位によって「くせ」があります。紹介したように貝やカメの化石と共にバラバラになって出てくる層もあれば、そういった水棲動物の化石がほとんど無く、大きな骨がまとまって出てくる層位、また足跡ばかりが出てくる層位などがあります。地層は当時の堆積した環境の違いを記録していますので、化石を探す上でも層位によって目の付けどころが違ってきます。ただし、いつも心がけなければいけないのは、どこから出てきてもおかしくない、ってことでしょうね。油断禁物です。

有望な岩石は確保
有望な岩石は確保
黒灰色の泥岩
黒灰色の泥岩

(宮田和周)

© 2013 Fukui Prefectural Dinosaur Museum.
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