猛暑の中の発掘作業はなぜ?

暑さの中ハンマーを振るう学生たち
暑さの中ハンマーを振るう学生たち

恐竜博物館の発掘作業は7月下旬から9月上~中旬まで行われるのが通例です。発掘はまさに梅雨明けからはじまるひと夏続く作業なのです。最近は夏の間中、猛暑日の連続のニュースが途切れることがありませんが、発掘現場も例外ではありません。そう、現場はとにかく暑いのです。8月19日は勝山でも最高気温が34.6℃という実質上の猛暑日となり、日向では岩肌がいいように温められて、岩盤の上に立っていると長靴の中の足が熱くて仕方ない状態でした。日射しをまともに肌に受け続けるといろいろ問題が起こるので、暑くても長袖で作業をする人たちも多くいます。そんな暑さに耐え忍んでまで、なぜ私たちはわざわざ夏の盛りに発掘を行うのでしょうか。汗を流すのが好きだから?達成感がひとしおだから?夏の盛りでないと化石が見つかりにくい特別な理由があるから?

実は発掘にかかる人員確保がその主な理由です。化石が埋まっている崖は硬い岩石なので発掘には重機が活躍します。しかしそれは岩を大割りするのに役立っても、もろく小さい化石を取り出すには力が強すぎて大事な化石を壊してしまいかねません。そこで活躍するのは人間です。大量の岩石の中味をくまなく調べるには人海戦術が有効です。大割りした岩石を人間がハンマーで小割りにしながら逐一化石の有無を確認してゆく。そんな段階的作業が当館の発掘現場での化石探しには有効なようです。手伝ってくれるのは日本各地から駆けつけてくれる学生さん。地質系の学生が多いのですが、そういった分野に所属していても、見慣れないと岩石表面に露出した化石を見つけることはむずかしく、目を慣らす意味もあり、最低一週間は現場にいてもらえる人材を探します。昨今は学生さんも忙しいので長期で滞在できる時期は夏休みくらいしかありません。そういうわけで、発掘は夏の盛りに行うことになるのです。梅雨明け以降台風襲来前の時期は雨の日が少ないということも理由の一つとして挙げられるのでしょうが、決して我々が自虐的に暑い時期を選んでいるわけでないのです。

そんな暑さの中でも、おかげさまで発掘をはじめて25年、誰かが熱中症で倒れたという話は耳にしません。かえって気をつけなければいけない環境にいることを自覚しているからでしょうか(もちろん水分の用意と補給に気をつけてもらい、休憩もちゃんと取るようにしてもらっている上でですが。)。さあ、今日も暑さに負けず学生たちの響かせる槌音が現場にこだまします。

川を挟んで右手には足跡面、左手の丘の上には建設中の野外博物館が見える
川を挟んで右手には足跡面、左手の丘の
上には建設中の野外博物館が見える
重機で大割りする
重機で大割りする

(一島啓人)

© 2013 Fukui Prefectural Dinosaur Museum.
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