8月中旬の発掘調査にハンマー隊として参加してきました。「試練の一週間」で、現場ですぐに分かるような成果はあがっていません。そこで今回は趣向を変えて、ハンマー隊初心者向けに行っている「化石の探し方」ガイダンスの内容を紹介します。
恐竜は生きていたときの姿(組み上げられた全身骨格のような姿)のまま見つかることはありません。体の大きさに比べるとはるかに薄い地層に化石が入っていることからも予想できますね。また骨がつながった状態で見つかることもまずありません。恐竜博物館地下1階にカマラサウルスの産状を示した複製標本を展示していますが、このように「身体が横倒しになっただけで、全身の骨がかなりつながった」状態で見つかるのはとても稀なことです。多くの場合、化石は地層の中に体の骨がバラバラになって埋もれています。
化石を探すときに注意したいのは、勝山の発掘現場では、骨の化石は「骨そのままの形」では見つからないことです。化石は硬い岩石の中に含まれているので、外形から判断するのではなく、割った石の断面に骨や貝殻の構造を探す必要があります。「骨のような形」が見つかっても、すぐには喜ばずに、まずは骨の組織があるかどうかを確かめて下さい。
では、どんなものを探せばよいのでしょうか。石の断面をじっくりと観察してください。石を作っている砂粒が分かりますか?化石を見つける第一歩は砂粒以外のものを探すことです。最も多く見つかるのは黒光りする「炭」になった植物の化石です。たまにシダの葉の模様が残っていることもあります。これらも恐竜が食べていた植物なのかもしれません。次によく見つかるのは飴色に光る板状のもので、断面では湾曲した線、あるいは螺旋形に見えますが、これは二枚貝や巻貝の殻です。恐竜やワニの歯の場合、表面にはヒトの歯と同じようなエナメル質の光沢が分かります。歯と同じような光り方をする魚の鱗の化石もしばしば見つかります。骨の場合、砂粒が見えない「板や塊」があって、中にたくさんの穴が空いているような組織があったり、断面が段になった割れ方をしたりしていたら、要注意です(8月20日のレポートをご覧ください)。ルーペで拡大して見てください。館のスタッフや熟練したハンマー隊員にも聞いてみましょう。カメの甲羅だと平らな形をしているので分かりやすいのですが、見つかったのが何の生き物のどの部分の骨かは、クリーニング作業をするまでは分かりません。現場では「骨片」としていたものが、クリーニングしてみたらとても重要な骨だったということもあります。どの隊員にも恐竜の歯やカギ爪などを発見するチャンスがあります。
こう書くと化石を見つけるのは難しいと思われるかもしれませんが、石を割り、注意深く観察しているとだんだん化石が分かるようになってきます。来夏には発掘現場に野外博物館が完成し、発掘体験もできるようになる予定です。このガイダンスは発掘体験にも参考になるかもしれません。楽しみにお待ちください。