2019年度 第四次恐竜化石調査成果報告
2019年7月29日より実施している第四次恐竜化石調査について、発見された重要標本を中心に報告いたします。
2019年度 第四次恐竜化石調査の概要
発掘現場では1989年から継続的に調査を行っています。第四次恐竜化石調査は2013年度から開始し、第三次調査を行っていた場所より下流側を発掘し、フクイラプトルやフクイサウルスが発見された地層(ボーンベッド)を調査しています。
現在まで、そのボーンベッド周辺から鳥類化石(2013年度)やヨロイ竜類の歯化石(2017年度報告)、オルニトミモサウルス類化石(2018年度報告)など、新しい化石が相次いで発見されてきました。
本年度は、昨年度の続きとなるボーンベッドの下流側の調査に加え、その下位の地層の発掘調査も行いました。調査の結果、4200点を超える骨化石が発見され、現在までの調査では最も骨化石の密度が高いエリアであったことが示されました(2018年度が約4000点で過去2番目)。
- 調査期間
- 2019年7月29日㈪から9月7日㈯ (41日間)
- 調査地
- 勝山市北谷町杉山 恐竜化石発掘現場
- 地層
- 手取層群北谷層(白亜紀前期、約1億2000万年前)
- 調査面積
- 約50㎡
- 参加人数
- 延べ 約850名
(福井県立恐竜博物館職員、県内外恐竜化石研究者、地質学・古生物学系大学生・大学院生など)
獣脚類
中型の肉食恐竜の非常に保存状態の良い頸椎や尾椎、趾骨が発見されました。(画像1)
- 頸椎
- 第9頸椎、13.8×8.8×5.6 cm
- 尾椎
- 前方(第1〜10)尾椎、6.2×8.6×3.0 cm
- 趾骨
- 右第Ⅱ趾第1趾骨、7.1×3.7 ×3.8 cm
- 意義
-
今回発見された頚椎は、ほぼ完全な状態で保存されたもので、アロサウルス上科というグループの特徴をよく観察することができます。また、昨年度とは異なり、中型の獣脚類の尾椎や趾骨などが発見されていることから、来年度の調査で追加標本が期待できます。
本発掘現場からは、第一〜二次調査で同じくアロサウルス上科に含まれるフクイラプトルの頭骨の一部や手足の骨化石が発見されていましたが、脊椎骨については多くが欠損していました。しかし、本年度発見した化石は全体が保存されており、頚部の形態的な特徴を知ることができる重要な標本であると言えます。
鳥脚類
鳥脚類の仙椎2点が発見されました。(画像2)
- 大きさ
- 13.0×8.1×9.7 cm, 16.1×8.5×9.6 cm
- 意義
- 近隣のエリアから手や尻尾の骨が発見されており、関連している可能性があります。また2個体分発見されていることから、複数個体の関連骨格があることを示しています。
足跡化石
ボーンベッドより下位の地層において、少なくとも3層(上位より足跡層A、B、C とします)の足跡化石層が認められました。
- 足跡層Aの竜脚類の足跡化石:右後足、約50×50 cm(画像3)
- 爪痕まで保存されており、北谷層では最も保存状態のよい竜脚類の足跡化石といえます。
- 足跡層Bのカメ類?の足跡化石:部位不明、約4.5×5.5cm/約3×4cm(画像4)
- カメ類の足跡化石の可能性が非常に高いと考えられます。カメ類の足跡だとすると国内発の発見となります。
- 足跡層Bの小型爬虫類の遊泳痕?:部位不明、約11×3cm/約5×4cm(画像5)
- 小型のワニ類やカメ類が泳いだ際に水底につけられた足跡化石の可能性が高いです。
- 足跡層Cの鳥脚類の足跡化石:右後足(凸型)、約30×25cm(画像6)
- フクイサウルスやコシサウルスを含むグループである、イグアノドン類の足跡化石である可能性が高いです。
- 意義
- 足跡化石はボーンベッドより下位から、少なくとも3層準において認められました。足跡層Aは、本発掘現場において露出面積が過去最大の足跡化石面となっており、獣脚類・竜脚類・鳥脚類を含む多様な恐竜類の足跡化石が多数保存されています。その下位にある足跡層Bからは恐竜に加えて、カメ類を含む小型爬虫類の足跡化石が10点以上発見されました。保存状態は良好で、その中には小型爬虫類の遊泳痕の可能性がある足跡化石も含まれることが分かりました。最も下位となる足跡層Cからは保存状態の良い鳥脚類の足跡化石を発見しました。また、足跡層BとCの間の砂岩層から骨化石も産出しており、ボーンベッドの下位にも豊富な化石含有層が存在することが示されました。広範囲の同一地層面において、計24点にも及ぶ複数種類の足跡化石が確認されました。さらに、同一面上には水の流れた跡を示す堆積構造(漣痕)も認められることから、これらの足跡を残した恐竜たちがどのような場所を歩いていたのかを復元する上で重要な情報を得ることもできます。
標本画像
画像1. 発見された獣脚類化石。左から順にA 頚椎(前面)、B 尾椎(側面)、C 趾骨(上面)。
画像2. 発見された鳥脚類の仙椎化石(2点)。
画像3. 足跡層A に保存されていた竜脚類の右後足の足跡化石(凹型)。
画像4. 足跡層B から産出したカメ類(?)の足跡化石(凸型)。
画像5. 足跡層B から産出した小型爬虫類の遊泳痕(?)。
画像6. 足跡層Cから産出した鳥脚類(イグアノドン類)の右後足の足跡(凸型)。