長崎市の鳥脚類恐竜(ハドロサウルス上科)の歯の化石について

2017年7月18日

長崎半島西海岸に分布する白亜紀後期の三ツ瀬層みつせそう(約8100万年前)から、ハドロサウルス上科の歯の化石が35点発見されましたので、一般公開いたします。化石は長崎市と福井県立恐竜博物館による共同調査により発見されたもので、長崎に生息していた恐竜の多様性を示す新たな資料となります。

経緯

今回公表の歯の化石は、共同調査が開始された2013年(平成25年)より断片的な化石が見つかっていましたが、昨年度(2016年)および一昨年度(2015年)の調査による、より保存の良い化石が加わったことで詳しい鑑定が進みました(2013年1点、2014年5点、2015年17点、2016年12点)。また2013年発見をのぞくこれら歯は、2014年公表のティラノサウルス科の歯化石と同じ産出地から発見されています。

なお、長崎市における鳥脚類の化石は、長崎半島西海岸(野母崎地区)の三ツ瀬層から左大腿骨遠位部(ひざの関節部:2004年発掘/2010年公表)が、長崎半島東海岸の茂木地区北浦町の三ツ瀬層相当層から右大腿骨の上半部(2011年発掘/2012年公表)がそれぞれ発見されています(図1)。

図1:三ツ瀬層の分布
図1:三ツ瀬層の分布
ハドロサウルス上科の歯の化石は長崎半島西海岸に分布する三ツ瀬層から産出しました。過去、西海岸の野母崎地区、および東海岸の茂木地区北浦町からはハドロサウルス科の大腿骨化石が発見されています。
画像提供:長崎市教育委員会・福井県立恐竜博物館

発見された化石

(図2:代表的な4点(①~④)のみ掲載)

部位と点数

歯の化石 35点(うち上顎骨歯と確認できるもの19点)

大きさ(高さ×幅×厚さ)

① 8 mm×8 mm×11 mm、② 11 mm×7 mm×7 mm、③ 8 mm×6 mm×7 mm、④ 10 mm×8 mm×10 mm

種類

恐竜類 鳥盤類 鳥脚類 ハドロサウルス上科

特徴

咬合面(噛み合わせの面)が、U字型あるいは水平であり、表面には鳥脚類特有のY字または十字の模様が見られます。歯根部が二つに分かれないなどから鳥脚類の歯と判別でき、①1本の顕著な稜を持つこと、②白亜紀後期(約8100万年前)ということを考慮すると、比較的進化したハドロサウルス上科の歯であると考えられます。

今回発見された歯は、実際に咀嚼に使われていた機能歯で、摩滅が進行し、生えかわりによって自然に顎から抜けたものです。摩滅が進行した歯では上顎ないし下顎の歯であるかの判断は困難ですが、上顎骨歯では歯の片側(頬側)に稜が発達し、その両脇はなだらかな曲線となります。また、歯の反対側の面(舌側、口蓋側)は凹凸のある不規則な形状を示します(図2)。

鳥脚類の中でも特に、ハドロサウルス上科に分類される派生的なグループは、顎に歯が密接に並ぶ〝デンタルバッテリー〟と呼ばれる構造を持ちます。これは、効率の良い咀嚼を行う上での重要な特徴です(図3)。今回の発見された歯はそうしたデンタルバッテリーを持つハドロサウルス上科の派生的な種類であることは判明していますが、より詳しい種類の特徴は残念ながら残されてはいません。

意義

本標本が発見された三ツ瀬層(約8100万年前)の時代は、鳥脚類のハドロサウルス科の恐竜が主に進化し、アジアから北米にかけて繁栄していました。しかし、アジアの内陸部には、ハドロサウルス科よりも原始的な種類(ハドロサウルス上科ではあるが、ハドロサウルス科ではない恐竜)も発見されています。今回発見された歯は、種類を判別できる特徴を残していませんが、多くの歯の発見は多様な種類がいた可能性や、既に発見されているハドロサウルス科の大腿骨のような、体の特定につながる追加の化石の発見が大いに期待できます。

さらに、自然に抜けた歯ばかりであることは、発掘現場は恐竜が生活をしていた場所に近いと推察されます。継続的に調査を行い、その周囲にいた動植物化石の発見も続けば、恐竜が暮らす多様な白亜紀後期の長崎の生態を復元できることでしょう。

白亜紀後期の鳥脚類恐竜(ハドロサウルス上科)の国内関連資料

国内における白亜紀後期のハドロサウルス上科化石は、以下の9地点から報告されています。

  • 北海道小平町:大腿骨と骨盤の一部
  • 北海道むかわ町:全身骨格
  • 岩手県久慈市:歯
  • 福島県広野町:歯と頚骨
  • 福島県いわき市:胸骨と脊椎骨
  • 兵庫県淡路島:歯骨(下あごの骨)、烏口骨、頚椎、尾椎
  • 香川県さぬき市:脊椎骨
  • 熊本県御船町:頭骨の一部、歯
  • 長崎県長崎市:大腿骨

:ハドロサウルス科の化石として報告されている。

展示公開予定

新たに発見された歯の実物化石と複製は、下記の予定で長崎市と福井県立恐竜博物館にて一般公開されます。

長崎市軍艦島資料館
7月20日㈭~7月23日㈰ 実物化石35点を展示
長崎市科学館
7月25日㈫~9月18日㈪㈷ 実物化石35点を展示
福井県立恐竜博物館
7月19日㈬~10月15日㈰ 複製6点を展示

標本画像

図2:発見されたハドロサウルス上科の鳥脚類の歯化石(一部、上顎骨歯)<br>画像提供:長崎市教育委員会/福井県立恐竜博物館
図3:発見された上顎骨歯について<br>画像提供:長崎市教育委員会/福井県立恐竜博物館
参考図 白亜紀後期のハドロサウルス上科の鳥脚類エドモントサウルス(画像提供:山本 匠)

福井県立恐竜博物館

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