2021年度 第四次恐竜化石調査成果報告
2021年7月26日より実施している第四次恐竜化石調査について、発見された重要標本を中心に報告いたします。
2021年度 第四次恐竜化石調査の概要
発掘現場では1989年から継続的に調査を行っています。第四次恐竜化石調査は2013年度から開始し、第三次調査を行っていた場所より下流側を発掘し、フクイラプトルやフクイサウルスが発見された地層(ボーンベッド)を調査しています。
現在まで、そのボーンベッド周辺から原始的な鳥類のフクイプテリクス(2013年度発見、2019年度命名)やヨロイ竜類の歯化石(2017年度報告)、オルニトミモサウルス類化石(2018年度報告)など、新しい化石が相次いで発見されてきました。
本年度は、昨年度に引き続きボーンベッドの調査を中心に行い、また下流側に残されていた上位の地層の発掘調査も実施しました。本調査の結果、竜脚類の連続足跡やカメ類の連結甲羅、オルニトミモサウルス類の中足骨など恐竜体化石を含む1,760点の化石標本を採集しました。
- 調査期間
- 2021年7月26日㈪から9月10日㈮ (46日間)
- 調査地
- 勝山市北谷町杉山 恐竜化石発掘現場
- 地層
- 手取層群北谷層(白亜紀前期、約1億2000万年前)
- 調査面積
- 約150㎡
- 採集標本総数
- 1,760点
- 採集標本の内訳(分類は発掘時の同定)
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- 恐竜類:172点(獣脚類 48、竜脚類 6、鳥脚類 14、ヨロイ竜類 1、不明 103)
- その他爬虫類:663点(ワニ類 69、カメ類 593、トカゲ類 1)
- 魚類:43点
- 未判別脊椎動物化石:800点
- 足印化石:10点(竜脚類連続足印化石は未採集であるため含まれていません)
- その他(昆虫や植物、卵殻など72点)
竜脚類の連続足印化石
前足と後足の5つのペアが交互に残り、連続した歩行痕(行跡)とみられる竜脚類の足印化石が発見されました。(画像1)
- 前足5点
- 1点の最大は22×35 cm
- 後足5点
- 1点の最大は58×32 cm
- 意義
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本発掘現場では、以前から竜脚類の足印化石は確認されていました。しかし、これらはいずれも単独の足印であり、連続した歩行痕である行跡の発見は今回が初めてとなります。またこれは国内では2例目の発見です。
行跡は、恐竜の速度や歩様など骨化石からはわからない情報をもたらします。北谷層から発見された竜脚類の行跡からは、比較的ゆっくり歩いていたことや中国で発見されている竜脚類の行跡に類似する特徴が見られることなどが判明しました。今後、他の竜脚類の行跡や骨格化石などと比較すること により、当時の竜脚類の歩行様式の解明に役立つことが期待されます。この発見については、2月6日㈯に開催された日本古生物学会第171回例会で、その概要が発表されました。
その他、2021年度の発掘では恐竜の足印化石4点、カメ類の足印化石6点が発見されました。
カメ類化石
状態の良好なカメ類の甲羅の化石が発見されました。
- 背甲の印象化石
- 19×26×9 cm(画像2-1)
- 腹甲後半と背甲の一部
- 17×17×3 cm(画像2-2)
- 縁板と腹甲の一部
- 8×8×3 cm
- 甲羅片
- 3 cm以下(一部は部位特定済み)
- 意義
- カメ類化石は本発掘現場から最も多く発見される脊椎動物化石です。しかしその多くはバラバラで、全体がつながって発見されることはほとんどありません。全体の約2/3が保存されており、変形せずに多くがつながった状態の甲羅の発見は、本発掘現場で初となります(変形した小型の甲羅は平山(2002)で報告済み)。この甲羅は北谷層から最もよく見つかる(カメ化石全体の7割を占める)アドクス科のカメのものですが、これまではバラバラになった甲羅がほとんどだったため、それらの分類研究に有用な標本と言えます。
恐竜体化石
2021年度の発掘調査では、恐竜類の体化石100点以上が発見されました。代表的な標本を以下に紹介します。
- オルニトミモサウルス類の中足骨
- 6×1×1 cm(画像3-1)
- 竜脚類の歯
- 3×1×0.9 cm(画像3-2)
- 鳥脚類の肩甲骨
- 19×8×2.5 cm(画像3-3)
- 意義
- 近年、本発掘現場では、オルニトミモサウルス類の化石が多く発見されています。現段階では、種を同定できるほどの標本は採集できていませんが、本年度 未クリーニングの標本や引き続き行われる骨化石密集層の調査で追加標本が大いに期待されます。
標本画像
画像1.竜脚類の連続足印化石。下は足印を図示したもの(紫:右足、緑:左足、矢印:進行方向)。
画像2-1.カメ類の背甲(印象)。
画像2-2.カメ類の腹甲。
画像3-1.オルニトミモサウルス類の中足骨。スケールは5 cm。
画像3-2.竜脚類の歯。スケールは1 cm。
画像3-3. 鳥脚類の肩甲骨。スケールは5 cm。